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株式投資収益率 2008年
公益財団法人 日本証券経済研究所 編 |
収録内容
CD-ROMには、以下のものが収録されています。
- 対象企業:東京証券取引所株式市場第一部および第二部上場全企業。
- 対象期間: 第一部は1952年1月から2008年12月まで。
第二部は1974年10月から2008年12月まで。 - 計算結果
(1) 東証一部および二部の市場収益率(月間・年間)
(2) 東証一部および二部の株価指数
(3) 東証一部および二部の投資年別市場収益率(加重平均および単純平均)
(4) 東証一部および二部別の産業別収益率(月間・年間,28分類)
(5) 銘柄別収益率(月間・年間)
2008年中上場廃止会社の収益率(月間・年間)
(6) 銘柄別の投資期間別収益率(1,3,5,10年)
概 要
2008年株式投資収益率の概要
株式投資収益率とは、株式投資から得られる収益の投資額に対する比率である。収益には配当や値上がり益(値下がり損)の他に、株主割当増資によって得られる利益などが含まれる。株主優待などの利益は含まれていない。また、税金、手数料などのコストは考慮されていない。年間収益率は、前年の平均株価で買い、当年の平均株価で売ったものとして計算されている。月間収益率は前月末に買い当月末に売ったという前提で計算している。
(1)東証第一部の年間収益率はマイナス26.2%(加重平均)
2008年の東証第一部上場銘柄の年間収益率(加重平均)は-26.2%となった(表1)。加重平均では4年連続で記録したプラスの年間収益率が途絶えただけではなく、92年に記録した-24.8%を下回り、日本証券経済研究所が計測を始めた1952年以降で最悪の結果となった。単純平均では-27.9%となり、2007年に引き続きマイナスの年間収益率であった。
2008年の東証第一部の収益率を月ごとに見てみると、特に1月から3月と、9月から10月にかけて大幅に下落していることが解る。第一部で最も月間収益率が高かったのは4月(11.0%)、最も低かったのは10月(-19.8%)であった(9月は-12.6%)。
2008年の株式市場は、(1)サブプライム・ローンが発端となった金融危機、(2)年初および年末に進んだ円高、(3)輸出型企業を中心とした企業業績の大幅な下方修正、(4)年央にかけて進んだ原油など素材・原材料価格の高騰など、複数の要因が相場の大幅な下落をもたらした。国内でも日銀総裁が空席となる時期があるなど、政治の混迷が続いた。(「加重平均収益率」および「単純平均収益率」については「解説」を参照のこと。)
(2)長期投資の収益率(第一部、加重平均)
家計に対して証券投資を促す場合、その前提となるのは、十分にリスク分散されたポートフォリオへの継続的な長期投資である。東証第一部においては、バブル経済が崩壊した90年代以降、2008年を含め10の年で単年の投資収益率がマイナスとなっている。しかしながら、2008年まで継続投資を行った場合、89年・2006年・2007年の3時点を除いて、どの時点で東証第一部ポートフォリオへの投資を開始しても平均年間収益率はプラスとなっている。最悪のケースとして、バブル経済のピークである89年に投資を開始し、2008年まで継続した場合でも、年間収益率は平均で-0.6%に留まっている。より長期の投資となるならば、78年から2008年まで30年間投資した場合の年間収益率は平均で7.0%まで上昇する。この期間の消費者物価の上昇率が平均で年間約1.4%であることを考慮すると、実質的な平均年間収益率は約5.6%となる。十分に分散された株式ポ-トフォリオに対して、長期にわたって継続的に投資を行うメリットはあろう(表2)。
(3)東証第二部の年間収益率はマイナス28.9%(加重平均)
東証第二部上場銘柄の加重平均年間収益率は-28.9%となり、2007年に続いてマイナスの収益率であった(2007年は-8.2%)。加重平均と同様に東証第二部の単純平均もマイナスとなり、-29.4%を記録している。月ごとに見ると、東証第二部の月間収益率がプラスとなったのは僅か3つの月(2月・4月・5月)しかなかった。第二部で最も月間収益率が高かったのは4月(5.1%)、最も低かったのは10月(-15.4%)であった(表3)。
(4)配当利回りは1.39%(第一部)、1.47%(第二部)
株主への還元として、配当利回りを見てみよう。東証第一部上場銘柄の平均配当利回りは1.39%となり、90年以降の上昇傾向を維持した(表1)。しかしながら、無配銘柄が2007年の92銘柄から94銘柄へ増えるなど、企業業績の悪化を反映して無配や減配となる銘柄が目立つ。2008年の配当利回りは、株価下落による相対的な増加となった。
東証第二部上場銘柄の平均配当利回りは2007年の1.25%から1.47%へ増加した(表3)。無配は2007年の55銘柄から51銘柄へと減少している。ちなみに、2008年の預金金利(日銀金融市況、定期預金の預入期間別平均金利)は、1年物で0.312%から0.399%、5年物で0.591%から0.698%(共に1千万円以上)、国債指標銘柄利回りは、1.175%(12月)から1.849%(6月)の間で推移している。
(5)第一部は「空運業」、第二部も「空運業」(産業別、28分類)
2008年の産業別平均投資収益率は、東証第一部28業種すべてでマイナスとなった(表4)。もっともマイナス幅が小さかったのは「空運業」の-9.4%であり、「その他製品」の-9.5%が続いた。これら2業種以外は二桁の下落幅となった。最も低い年間収益率となったのは「不動産業」の-41.7%である。東証第一部の産業を市場収益率と相対的に比較してみると、28業種のうち13業種で東証第一部の市場収益率である-26.2%(上記参照)を上回った。逆に、市場収益率を下回った15業種のうちで、特に、「不動産業」と「非鉄金属」(-39.9%)が市場収益率を10%以上下回っている。相対比較を2006年から2008年の3年間とすると、「その他製品」、「鉱業」、「精密機器」の3業種が当該年の市場収益率を常に上回っていた。一方で、「建設業」、「倉庫・運輸関連業」、「ゴム製品」の3業種の収益率は、過去3年間にわたり一度も市場収益率を上回っていない。
東証第二部でもすべての業種でマイナスの年間収益率となった(鉱業は該当なし)。マイナス幅が一桁に留まったのは、「空運業」(-1.8%)と「パルプ・紙」(-6.2%)の2業種のみであった。一方で、「非鉄金属」の-53.4%を筆頭に、5業種でマイナス幅が40%を超えた。東証第二部の産業を市場年間収益率と相対的に比較してみると、2008年の市場年間収益率である-28.9%を上回ったのは「空運業」を筆頭に13業種あった。逆に6業種が市場年間収益率を10%以上下回っている。
(6)年間収益率が100%以上は2銘柄
個別銘柄別にみると、東証第一部と第二部を合わせた2,095銘柄(上場廃止銘柄、上場1年未満銘柄を除く)のうち、1,984銘柄の年間収益率がマイナスであった。逆に年間収益率が100%以上となったのは2銘柄で、2007年の11銘柄から減少した。2008年の収益率の階層で最も該当する銘柄が多かったのは-20%台であり、東証第一部と東証第二部を合計して489銘柄が該当した(表5)。
解 説
Ⅰ 収益率計算の対象と期間
〈対 象〉
東京証券取引所上場株式全銘柄(第一部および第二部)。
〈期 間〉
第一部……昭和27年(1952年)1月から平成20年(2008年)12月まで。
第二部……昭和49年(1974年)10月から平成20年(2008年)12月まで。
Ⅱ データの説明
〈個別銘柄〉
(1) 月間収益率 前月末に買い当月末に売った場合の投資収益率,月率。現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。
(2) 年間収益率 前年各月の平均株価で買い当年各月の平均株価で売った場合の投資収益率,年率。月間と同様,現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。
(3) 配当利回り 投資金額に対する現金配当の割合。割当増資による増配分も含まれる。 配当依存率=配当利回り/年間収益率。
(4) 投資期間別収益率 たとえば,投資期間5年の収益率は,5年前の平均株価で買って,当年の平均株価で売った場合の年あたり複利収益率。投資期間1,3,5,10年のみについて計算されている。ただし,対象期間中上場されているものに限って計算。(2008年基準)
〈市 場〉
(1) 月間市場収益率 全銘柄の月間収益率の加重平均。ウエイトは前月末の株式時価総額。一部,二部それぞれについて算出。
(2) 年間市場収益率 全銘柄の年間収益率の加重平均。ウエイトは前年末の株式時価総額。
(3) 市場配当利回り 全銘柄の配当利回りの加重平均。ウエイトは,前年末の株式時価総額。
(4) 投資期間別市場収益率
1) 加重平均収益率(マーケット・ポートフォリオの収益率)
全銘柄の加重平均収益率。ただし,毎年各銘柄への投資額がそのときの時価総額の比率に等しくなるように資金の再配分(買いかえ)を行ったときの収益率。すなわち,マーケット・ポートフォリオを維持するように組みかえを行ったときの収益率。
2) 単純平均収益率 毎年,各銘柄への投資ウエイトが等しくなるように,資金の再配分を行った場合の収益率。
(5) jsri株価指数
全銘柄の資産倍率の加重平均値。jsri株価指数の各月の増加率は,月間市場収益率に等しい。買いかえ型(ただし毎月)加重の投資戦略をとった場合の投資価値の倍率。 jsri株価指数は,東証株価指数に配当落ち修正を施したものとほぼ等しい。第一部は1951年12月28日=1,第二部は1974年9月30日=1。
〈産 業〉
市場収益率とまったく同様に計算されている。違っているのは集計の範囲のみである。
公益財団法人日本証券経済研究所は、株式市場の記録とその保持を目的として株式投資収益率を計測しております。
弊所が使用する独自の計算式は、実際の株式投資を用いた資産運用手法への適用を考慮したものではありません。(使用計算式は、出版書籍の「解説」をご覧下さい。)
弊所が計測した株式投資収益率の結果が投資の勧誘等に用いられている旨のご連絡を受けておりますが、弊所はあくまでも過去の計測記録として公開しており、投資勧誘等の営利的行為への使用を目的としてはおらず、また、許可もしていません。
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