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株式投資収益率 2009年
公益財団法人 日本証券経済研究所 編 |
収録内容
CD-ROMには、以下のものが収録されています。
- 対象企業:東京証券取引所株式市場第一部および第二部上場全企業。
- 対象期間: 第一部は1952年1月から2009年12月まで。
第二部は1974年10月から2009年12月まで。 - 計算結果
(1) 東証一部および二部の市場収益率(月間・年間)
(2) 東証一部および二部の株価指数
(3) 東証一部および二部の投資年別市場収益率(加重平均および単純平均)
(4) 東証一部および二部別の産業別収益率(月間・年間,28分類)
(5) 銘柄別収益率(月間・年間)
2009年中上場廃止会社の収益率(月間・年間)
(6) 銘柄別の投資期間別収益率(1,3,5,10年)
概 要
2009年株式投資収益率の概要
株式投資収益率とは、株式投資から得られる収益の投資額に対する比率である。収益には配当や値上がり益(値下がり損)の他に、株主割当増資によって得られる利益などが含まれる。株主優待などの利益は含まれていない。また、税金、手数料などのコストは考慮されていない。年間収益率は、前年の平均株価で買い、当年の平均株価で売ったものとして計算されている。月間収益率は前月末に買い当月末に売ったという前提で計算している。
(1)東証第一部の年間収益率はマイナス20.8%(加重平均)
2009年の東証第一部上場銘柄の年間収益率(加重平均)は-20.8%となった(表1)。08年に引き続き、2年連続でマイナスの収益率を記録した。単純平均では-15.7%となり、2007年から3年連続でマイナスの年間収益率となった。2009年の東証第一部の収益率を月ごとに見てみると、1月と2月、9月から11月にかけて下落していることが解る。第一部で最も月間収益率が高かったのは12月(8.2%)、最も低かったのは1月(-7.5%)であった。
2009年の株式市場は、年央にかけてプラスの月間収益率を維持したが、年間では08年に続いて20%を超える下落率となった。08年から続く企業業績の低迷等から、1月・2月に下落をしたものの、①円高傾向の緩和、②中国などの新興国の景気回復、③米国市場の上昇、に引っ張られる形で、3月から8月にかけて株価は比較的堅調に推移した。しかしながら、12月には8.2%の上昇を記録したものの、①8月半ばからの急激な円高や、②新政権の経済政策が明らかとなるまでに時間を要したことなどから、9月から11月にかけて株価は下落が続いた。(「加重平均収益率」および「単純平均収益率」については「解説」を参照のこと。)
(2)長期投資の収益率(第一部、加重平均)
一般的な家計など、銘柄選別に関する専門技能が低い投資家に証券投資を促す場合、その前提となるのは、十分にリスク分散されたポートフォリオへの継続的な長期投資である。しかしながら90年代のバブル崩壊と近年の金融危機を経て、長期投資の優位性を実感することは困難になりつつあるように見える。長期投資の収益率を再確認してみよう。
東証第一部をポートフォリオの対象とし、バブル経済のピークと金融危機の期間を含んだ特異な例として、89年に投資を開始し2009年まで(21年間)投資を継続した場合を見ても、年間収益率は平均で-1.4%に留まる。より長期の投資期間を想定するならば、例えば投資期間を30年間(80年から2009年)にのばせば、年間収益率は平均で5.7%まで増加する。
若年勤労世代による退職後生活への備えなどに代表される長期間の資産運用を想定した場合、多くの経済的困難を投資期間中に考慮してもなお、十分に分散された株式ポートフォリオに対して継続的に投資を行うメリットは見出せよう(表2)。
(3)東証第二部の年間収益率は6.7%(加重平均)
東証第二部上場銘柄の年間収益率(加重平均)は6.7%となり、06年の21.3%から4年ぶりにプラスの収益率となった。東証第二部の単純平均もプラスへ転じ7.0%を記録している。月ごとに見ると、東証第一部と同様に年末にかけて相場の回復傾向が見られた。第二部で最も月間収益率が高かったのは3月(6.9%)、最も低かったのは5月(-7.6%)であった(表3)。
(4)配当利回りは1.89%(第一部)、2.21%(第二部)
株主への還元として配当利回りを見てみよう。東証第一部上場銘柄の平均配当利回りは1.89%となり(09年は1.75%)、90年以降の上昇傾向を維持している(表1)。企業業績の回復傾向を背景に、一部の企業で積極的な増配も見られた。しかしながら、配当利回りが算出された1,658銘柄中で166銘柄が無配であり、09年(1,671銘柄中103銘柄が無配)よりも無配企業の割合は増えている。2009年の配当利回りの増加は、企業の増配傾向と株価の低迷による利回り上昇とが入り交じった結果であると言えよう。
東証第二部上場銘柄の平均配当利回りは09年の2.08%から2.21%へと増加した(表3)。無配銘柄は421銘柄中で81銘柄あった。ちなみに、2009年の預金金利(日銀金融市況、定期預金の預入期間別平均金利)は、1年以上2年未満で0.094%から0.202%、5年以上6年未満で0.293%から0.582%、10年物で0.634%から1.064%(共に1千万円以上)、国債利回りは0.825%(10月)から1.395%(4月)の間で推移している。
(5)第一部は「ガラス・土石製品」、第二部は「水産・農林業」(産業別、28分類)
2009年の産業別平均投資収益率は、東証第一部で18業種がプラスとなった(表4)。もっとも収益率が高かったのは「ガラス・土石製品」の14.9%であり、「電気機器」の14.3%が続いた。最も低い年間収益率となったのは「空運業」の-25.3%であった。
東証第一部の各産業を市場収益率と相対的に比較してみると、28業種のうち半分の14業種で市場収益率である4.4%(上記参照)を上回った。逆に、市場収益率を下回った14業種のうちで、「空運業」と「鉱業」など4業種が市場収益率を10%以上下回っている。相対比較を08年から2009年の3年間とすると、「商業」・「サービス業」など4業種が当該年の市場収益率を常に上回っていた。一方で、「金融・保険業」など3業種の収益率は過去3年間にわたり市場収益率を上回っていない。
東証第二部では、22業種でプラスの年間収益率となり、「水産・農林業」(37.3%)と「非鉄金属」(35.2%)は30%を超える年間収益率となった(鉱業は該当なし)。ただし、「水産・農林業」に該当するのは「雪国まいたけ」一銘柄のみである。東証第二部の産業を市場年間収益率と相対的に比較してみると、2009年の市場年間収益率である6.7%を上回ったのは「水産・農林業」を筆頭に9業種あった。逆に3業種が市場年間収益率を10%以上下回っている。
(6)年間収益率が100%以上は12銘柄
個別銘柄別にみると、東証第一部と第二部を合わせた2,079銘柄(上場廃止銘柄、上場1年未満銘柄を除く)のうち、969銘柄の年間収益率がマイナスであった(09年は1,686銘柄)。逆に年間収益率が100%以上となったのは12銘柄で、09年の5銘柄から増加した(表5)。
解 説
Ⅰ 収益率計算の対象と期間
〈対 象〉
東京証券取引所上場株式全銘柄(第一部および第二部)。
〈期 間〉
第一部……昭和27年(1952年)1月から平成21年(2009年)12月まで。
第二部……昭和49年(1974年)10月から平成21年(2009年)12月まで。
Ⅱ データの説明
〈個別銘柄〉
(1) 月間収益率 前月末に買い当月末に売った場合の投資収益率,月率。現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。
(2) 年間収益率 前年各月の平均株価で買い当年各月の平均株価で売った場合の投資収益率,年率。月間と同様,現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。
(3) 配当利回り 投資金額に対する現金配当の割合。割当増資による増配分も含まれる。 配当依存率=配当利回り/年間収益率。
(4) 投資期間別収益率 たとえば,投資期間5年の収益率は,5年前の平均株価で買って,当年の平均株価で売った場合の年あたり複利収益率。投資期間1,3,5,10年のみについて計算されている。ただし,対象期間中上場されているものに限って計算。(2009年基準)
〈市 場〉
(1) 月間市場収益率 全銘柄の月間収益率の加重平均。ウエイトは前月末の株式時価総額。一部,二部それぞれについて算出。
(2) 年間市場収益率 全銘柄の年間収益率の加重平均。ウエイトは前年末の株式時価総額。
(3) 市場配当利回り 全銘柄の配当利回りの加重平均。ウエイトは,前年末の株式時価総額。
(4) 投資期間別市場収益率
1) 加重平均収益率(マーケット・ポートフォリオの収益率)
全銘柄の加重平均収益率。ただし,毎年各銘柄への投資額がそのときの時価総額の比率に等しくなるように資金の再配分(買いかえ)を行ったときの収益率。すなわち,マーケット・ポートフォリオを維持するように組みかえを行ったときの収益率。
2) 単純平均収益率 毎年,各銘柄への投資ウエイトが等しくなるように,資金の再配分を行った場合の収益率。
(5) jsri株価指数
全銘柄の資産倍率の加重平均値。jsri株価指数の各月の増加率は,月間市場収益率に等しい。買いかえ型(ただし毎月)加重の投資戦略をとった場合の投資価値の倍率。 jsri株価指数は,東証株価指数に配当落ち修正を施したものとほぼ等しい。第一部は1951年12月28日=1,第二部は1974年9月30日=1。
〈産 業〉
市場収益率とまったく同様に計算されている。違っているのは集計の範囲のみである。
公益財団法人日本証券経済研究所は、株式市場の記録とその保持を目的として株式投資収益率を計測しております。
弊所が使用する独自の計算式は、実際の株式投資を用いた資産運用手法への適用を考慮したものではありません。(使用計算式は、出版書籍の「解説」をご覧下さい。)
弊所が計測した株式投資収益率の結果が投資の勧誘等に用いられている旨のご連絡を受けておりますが、弊所はあくまでも過去の計測記録として公開しており、投資勧誘等の営利的行為への使用を目的としてはおらず、また、許可もしていません。
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