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出版物・研究成果等

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株式投資収益率 2012年

公益財団法人 日本証券経済研究所 編
ISBN978-4-89032-472-9
2013年4月発行
CD-ROM(Excel版)
本体(税別)8,000円 
購入

収録内容

CD-ROMには、以下のものが収録されています。

  1. 対象企業:東京証券取引所株式市場第一部および第二部上場全企業。
  2. 対象期間: 第一部は1952年1月から2012年12月まで。
    第二部は1974年10月から2012年12月まで。
  3. 計算結果
    (1) 東証一部および二部の市場収益率(月間・年間)
    (2) 東証一部および二部の株価指数
    (3) 東証一部および二部の投資年別市場収益率(加重平均および単純平均)
    (4) 東証一部および二部別の産業別収益率(月間・年間,28分類)
    (5) 銘柄別収益率(月間・年間)
     2011年中上場廃止会社の収益率(月間・年間)
    (6) 銘柄別の投資期間別収益率(1,3,5,10年)

概 要

2012年株式投資収益率の概要

株式投資収益率とは、株式投資から得られる収益の投資額に対する比率である。収益には配当や値上がり益(値下がり損)の他に、株主割当増資によって得られる利益などが含まれる。株主優待などの利益は含まれていない。また、税金、手数料などのコストは考慮されていない。年間収益率は、前年の平均株価で買い、当年の平均株価で売ったものとして計算されている。月間収益率は前月末に買い当月末に売ったという前提で計算している。

(1)東証第一部の年間収益率はマイナス0.4%(加重平均)

 2012年の東証第一部上場銘柄の年間収益率は加重平均で-0.4%となった(表1)。その一方で、単純平均は3.5%となり、10年から3年連続でプラスの年間収益率を確保している。東証第一部の収益率を月ごとに見てみると、最も月間収益率が高かったのは2月(10.3%)、最も低かったのは5月(-10.3%)であった。
 2012年の株式市場は、欧州債務問題などの海外要因に影響を受ける相場が続いた後、11月の衆議院解散を契機に上げ潮相場へと転じた。昨年から引き続き、ギリシアを中心とした欧州債務問題は足枷となったが、年初の株式市場は為替相場の安定と米国株の上昇を背景に良好であった。3月には、前月の日銀による追加的な金融緩和と円安傾向もあり、一時的に日経平均が1万円台を回復している。その後は、ギリシア総選挙の結果や欧州要人の発言などに左右される不安定な相場が続いた。しかしながら、9月16日に欧州中央銀行がユーロ加盟国国債の無制限買入を発表すると、為替市場とともに株式市場も安心感を取り戻した。さらに、衆議院の解散(11月16日)が現実味を帯びると、急速な円安と海外投資家を中心とした資金流入により株式市場は大幅な上昇へと転じた。(「加重平均収益率」および「単純平均収益率」については「解説」を参照のこと。)

(2)長期投資の収益率(第一部、加重平均)

 一般的な家計など、銘柄選別に関する専門技能を必ずしも有していない投資家が株式投資をする場合、リスクが十分に分散されたポートフォリオに対して長期継続的に投資を行うことは、有効な投資手法の1つであると言われている。しかしながら、90年代のバブル崩壊と近年の金融危機などを経験し、このような投資手法に対する評価は必ずしも高くないように見える。ここでは、長期投資の収益率を再確認してみよう。
 東証第一部のポートフォリオを対象に、極端な例としてバブル経済のピークから継続的な投資を始めたと仮定してみよう。この投資期間は、世界的な金融危機も含んでいる。89年の平均株価で投資を開始して2012年まで(23年間)この投資を継続した場合、年間収益率は平均で-1.4%に落ち込む。マイナスの収益率である以上、この期間の投資が有効であったとは言えない。しかしながら投資期間を10年以上と定め、2012年末までの投資を見た場合、年間収益率がマイナスとなる投資開始年は88年から91年までと2000年の5時点のみであることは注目すべきである。これら5つの年は、いずれも株式市場がバブル的な時期であった。確かに投資時期の見極めは重要であるが、例えば、若年勤労世代による退職後生活への備えなど、長期間の資産運用を想定した場合、多くの経済的困難を考慮しても、十分に分散された株式ポートフォリオに対して継続的に投資を続けるメリットはあるだろう(表2)。

(3)東証第二部の年間収益率はプラス8.8%(加重平均)

 東証第二部上場銘柄の年間収益率(加重平均)は8.8%となり、3年連続でプラスの収益率となった。東証第二部の単純平均も8.5%を記録している。月ごとに見ると、最も月間収益率が高かったのは12月(7.5%)、最も低かったのは5月(-7.7%)であった(表3)。

(4)配当利回りは2.36%(第一部)、2.29%(第二部)

 株主への還元として配当利回りを見てみよう。東証第一部上場銘柄の平均配当利回りは2.36%となり、2000年以降の上昇傾向を維持している(表1)。配当利回りが算出された1,685銘柄中で無配となったのは115銘柄であり、11年よりも無配企業の割合は低下した。
 東証第二部上場銘柄の平均配当利回りは2.29%となり(表3)、東証第一部と同様に無配銘柄の割合も低下している。ちなみに、2012年の預金金利(日銀金融市況、定期預金の預入期間別平均金利)は、1年以上2年未満で0.075%から0.089%、5年以上6年未満で0.153%から0.264%、10年超で0.642%から1.019%(共に1千万円以上)、新発10年物国債利回りは0.685%(12月)から1.060%(3月)の間で推移している。

(5)第一部は「食料品」、第二部は「金融・保険業」(産業別、28分類)

 2012年の産業別平均投資収益率は、東証第一部で12業種がプラスとなった(表4)。もっとも収益率が高かったのは「食料品」の15.5%であり、「不動産業」の13.5%が続いた。最も低い年間収益率となったのは「海運業」の-29.6%であった。
 東証第一部の各産業を市場収益率と相対的に比較してみると、28業種のうち12業種で市場収益率である-0.4%(上記参照)を上回った。逆に、市場収益率を下回った業種のうちで、「海運業」など11業種が市場収益率を10%以上下回っている。相対比較を10年から2012年の3年間について行うと、「サービス業」・「ゴム製品」など6業種が当該年の市場収益率を常に上回っていた。一方で、「海運業」など6業種の収益率は過去3年間にわたり市場収益率を下回っている。
 東証第二部では、20業種でプラスの年間収益率となった(鉱業は該当なし)。ただし、「水産・農林業」は1銘柄(雪国まいたけ)のみである。東証第二部の各産業を市場年間収益率と相対的に比較してみると、2012年の市場年間収益率である8.8%を上回ったのは「金融・保険業」を筆頭に12業種あった。

(6)年間収益率が100%以上は16銘柄

 個別銘柄別にみると、東証第一部と第二部を合わせた2,067銘柄(上場廃止銘柄、上場1年未満銘柄を除く)のうち、年間収益率がプラスとなったのは1,168銘柄。また年間収益率が100%以上を記録したのは16銘柄で、11年から増加した(表5)。
(東証第一部の「あらた」の2012年年間収益率は106.7%であるが、2011年3月上場のため、表5の投資期間1年のランキングからは除外している。)

解  説

Ⅰ 収益率計算の対象と期間

〈対  象〉
東京証券取引所上場株式全銘柄(第一部および第二部)。

〈期  間〉
第一部……昭和27年(1952年)1月から平成24年(2011年)12月まで。
第二部……昭和49年(1974年)10月から平成24年(2011年)12月まで。

Ⅱ データの説明

〈個別銘柄〉

(1) 月間収益率 前月末に買い当月末に売った場合の投資収益率,月率。現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。

(2) 年間収益率 前年各月の平均株価で買い当年各月の平均株価で売った場合の投資収益率,年率。月間と同様,現金配当および株配・株主割当増資による収益を含む。

(3) 配当利回り 投資金額に対する現金配当の割合。割当増資による増配分も含まれる。 配当依存率=配当利回り/年間収益率。

(4) 投資期間別収益率 たとえば,投資期間5年の収益率は,5年前の平均株価で買って,当年の平均株価で売った場合の年あたり複利収益率。投資期間1,3,5,10年のみについて計算されている。ただし,対象期間中上場されているものに限って計算。(2012年基準)

〈市  場〉

(1) 月間市場収益率 全銘柄の月間収益率の加重平均。ウエイトは前月末の株式時価総額。一部,二部それぞれについて算出。

(2) 年間市場収益率 全銘柄の年間収益率の加重平均。ウエイトは前年末の株式時価総額。

(3) 市場配当利回り 全銘柄の配当利回りの加重平均。ウエイトは,前年末の株式時価総額。

(4) 投資期間別市場収益率

1) 加重平均収益率(マーケット・ポートフォリオの収益率)
全銘柄の加重平均収益率。ただし,毎年各銘柄への投資額がそのときの時価総額の比率に等しくなるように資金の再配分(買いかえ)を行ったときの収益率。すなわち,マーケット・ポートフォリオを維持するように組みかえを行ったときの収益率。

2) 単純平均収益率 毎年,各銘柄への投資ウエイトが等しくなるように,資金の再配分を行った場合の収益率。

(5) jsri株価指数

全銘柄の資産倍率の加重平均値。jsri株価指数の各月の増加率は,月間市場収益率に等しい。買いかえ型(ただし毎月)加重の投資戦略をとった場合の投資価値の倍率。 jsri株価指数は,東証株価指数に配当落ち修正を施したものとほぼ等しい。第一部は1951年12月28日=1,第二部は1974年9月30日=1。

〈産  業〉

市場収益率とまったく同様に計算されている。違っているのは集計の範囲のみである。

公益財団法人日本証券経済研究所は、株式市場の記録とその保持を目的として株式投資収益率を計測しております。
弊所が使用する独自の計算式は、実際の株式投資を用いた資産運用手法への適用を考慮したものではありません。(使用計算式は、出版書籍の「解説」をご覧下さい。)
弊所が計測した株式投資収益率の結果が投資の勧誘等に用いられている旨のご連絡を受けておりますが、弊所はあくまでも過去の計測記録として公開しており、投資勧誘等の営利的行為への使用を目的としてはおらず、また、許可もしていません。

 

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