第100号(2017年12月)
社外取締役の役割—取締役会改革,女性社外取締役の現状分析—
江川雅子(一橋大学大学院商学研究科教授)
- 〔要 旨〕
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2015年6月のコーポレートガバナンス・コード導入を契機に,日本企業で社外取締役が急増した。一部上場企業の98.8%が社外取締役を選任し, 2名以上の独立社外取締役を選任する会社の比率が79.7%となり(2016年),女性の社外取締役も増えている。
本稿では,一部上場企業14社の役員もしくは取締役会担当者,国内外の機関投資家数名,人材紹介会社の担当者若干名を対象に行ったインタビュー調査に基づいて,社外取締役の役割,選任プロセスと選任要因,女性取締役導入の影響などについて分析した。
その結果,(1)社外取締役は監督と助言の両方の役割を果たしており,社外取締役の導入は,取締役会の議論の活性化,ガバナンスの向上に一定の効果をもたらした,(2)社外取締役の導入について会社・投資家ともプラスの評価をしているが,その役割,選任理由,社外取締役比率などについて,投資家はやや厳しい見方をしており,形式よりも実質に注目している,(3)女性の社外取締役は,ジェンダー以外の要素も含めた多様性の向上を通じて,ガバナンス改善に貢献している,などが明らかになった。
今回の調査では,社外取締役が取締役会の意思決定に影響を及ぼしていることも明らかになった。例えば,社外取締役の意見を反映して意思決定の内容が修正された,議論を深めるために運営方法が改善された,などの報告があった。限られたサンプルに基づく分析だが,社外取締役が日本企業のガバナンスに次第に実質的な役割を果たすようになっていることが示された。