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第106号(2019年6月) ヨーロッパ資本市場研究会特集号

量的緩和とイングランド銀行財務

斉藤美彦(大阪経済大学経済学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 リーマンショック後においてイギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は,他の主要中央銀行と同様に非伝統的ないしは非標準的といわれる金融政策の採用を余儀なくされてきた。BOEの量的緩和政策の最大の特徴は,実際の資産購入(主として国債)は,子会社のAPF(Asset Purchase Facility)がこれを行い,BOEはこれへの貸付を行うという方式をとっていることである。そしてAPFの収益については財政収入,損失が発生した場合においては財政負担とするという取り決めが政府とBOEの間でなされているという点も大きな特徴点である。本稿においては,量的緩和期のBOE本体およびAPFの財務状況を分析したが,両者共に収益を挙げてきている。特にAPFは資産購入額の増加とともに収益増傾向となってきている(国債評価損が発生している年度もある)。
 ただし今後において正常化を本格的に目指し,資産売却を行う場合には,損失が発生し,それが巨額となることも考えられる。それはBrexitの帰趨にも影響されるであろうが,不透明ではある。しかしながら,BOEはこうした点についても情報発信を行い,それなりの説明責任を果たしている。

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