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第110号(2020年6月) 株式市場研究会特集号(下)

続・店頭デリバティブ市場の変貌—BIS統計に基づく考察—

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 BISによる2016年の店頭金利デリバティブ市場に関する調査で確認された大きな変化はドル建て取引の急増とユーロ建て取引の急減,そしてドル建て取引の中心市場であるアメリカとユーロ建て取引の中心市場であるイギリスの取引シェアの逆転であったが,2019年の調査でも店頭金利デリバティブ市場に新たな変化が確認された。まず,取引量が2016年に比べて143%増加するというこれまでにない現象が生じていた。そして,取引通貨の構成ではドル建て取引とユーロ建て取引が2016年調査とほぼ変わらないにもかかわらず,国別構成ではイギリスが再びアメリカを大差で逆転していた。2019年の変化はアメリカでのドル建て取引よりもイギリスでのユーロ建て取引の増加率が大きく,さらに両者をイギリスでのドル建て取引の増加率が上回るという変化によって生じていた。
 2019年12月のBIS四半期報告書によれば,取引量急増の原因としてグループ企業間取引の報告が進み,アメリカ以外の国の取引量が増えたこと,これが増加全体の約3割に達することがBIS統計に基づいて明らかにされた。そして,清算機関との圧縮取引も一因であり,LCHのデータから増加全体の25%というラフな推定をおこなっている。また,2016年調査に引き続き,アメリカでの金利上昇期待に伴うフォーワードやOICといった短期取引の増加が続いていると指摘する一方,報告義務のない金融機関との取引比率上昇から投資ファンド(とりわけETF)やアメリカのSEFでの自動取引の増加も4つ目の要因として挙げている。

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