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第116号(2021年12月)

コーポレートガバナンスの進化:
新規株式公開企業の取締役会構成の決定要因からの考察

森祐司(下関市立大学教授)

〔要 旨〕

 本研究では,わが国新規株式公開(IPO)企業のコーポレートガバナンスを,取締役会構成の決定要因から,その進化とともに明らかにすることを目的とする。まずは2000年代全般での特徴を明確にし,その後,株式公開から時間経過によってどのようにコーポレートガバナンス構造が変容したかを考察する。
 新規公開企業の取締役会の規模(人数)は,企業の事業の複雑性が強まったり(事業範囲仮説),外部との情報の非対称性が大きくモニタリングの必要性が高まったりする(モニタリング仮説)と,増加する傾向があることが示された。取締役会構成において社外取締役の比率は,社長の交渉力が強まると事業範囲仮説が支持され,モニタリング仮説は一部では支持される結果は得られたが,支持しない結果もあり,上場企業全般と同様に別の要因が働いている可能性も示唆された。社長の交渉力は社外取締役の選任に影響する要因として,特にIPO企業ではその影響が強いと見られることも窺われた。IPOからの経過年数別の推定では,モニタリング仮説は取締役会規模については,経過年数によってもその要因の有効性は変化しないことなどが分かったが,仮説によっては,有効でなくなる要因や有効となる要因などもあり,IPO後の経過年数によって変化が出てきていることを窺うことができた。

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