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第116号(2021年12月)

租税負担削減行動が社債の負債コストへ及ぼす影響

向真央(久留米大学商学部専任講師)
乙政正太(関西大学商学部教授)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,日本企業の租税負担削減行動が社債の負債コストに対してどのような影響を及ぼしているのかについて実証的に検証を行うことである。主に米国企業を対象とした先行研究では,租税負担削減行動によって負債コストが増大しているという結果と,逆に減少しているという結果が提示されており,首尾一貫した証拠が提示されていない。また,日本企業の租税負担削減行動が負債コストにどのような影響を及ぼしているのかという問いに対して,現状では実証的な検証がほとんど行われていないといえる。
 本稿で示された主な分析結果は以下の2点である。第1に,租税負担削減行動が行われた企業ほど,社債発行時に要求される利回りスプレッドが増大する傾向にあることが示唆された。また,その関連性は経営者の持株比率が高い企業で観察されることが明らかとなった。
 第2に,経営者の持株比率が高い企業において,租税負担削減行動と社債の利回りスプレッドの間に因果関係があることが確認された。この結果は,投資家が経営者の持株比率が高い企業の社債に対して投資意思決定を行う場合,租税負担の実施された程度に応じて,追加的な負債コストを要求していることを示唆している。

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