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第116号(2021年12月)

アクティビストの標的企業とその属性

井口益男(東京都立大学大学院経営学研究科博士後期課程)
浅野敬志(東京都立大学大学院経営学研究科教授)

〔要 旨〕

 本稿では,アクティビスト第2興隆期前半(2012年〜2015年)におけるアクティビストの標的となった企業の属性分析を行う。その際,定量的に捉えることが可能なアクティビストの要求を有効にするための方法を特定し,その方法に応じ,アクティビストを分類したうえで標的企業の属性を分析する。先行研究でも定量的に把握可能な事実に基づきアクティビストを分類したうえで標的企業の属性を分析することはされていない。
 主な分析結果は以下のとおりである。①要求を公開し,長い期間や,高い保有比率まで株式を保有しないアクティビストは先行研究と同様典型的なフリーキャッシュフロー(FCF)問題が生じやすいキャッシュリッチな企業(TobinのQが低く,現金等保有比率が高い)を標的とする。一方,アクティビストの要求が通りやすい株主構成の企業を先行研究と異なり,標的としない。②そのようなアクティビストは資金力が低いか規模の小さい企業に分散して投資し,短い保有期間で株主還元を引き出して超過収益を達成することを目的とする性質を有している。③それ以外のアクティビストは典型的なFCF問題が生じやすい企業を標的としていないが,アクティビストの要求が通りやすい株主構成の企業を標的とする。
 以上の結果は,第2期興隆期前半において,アクティビストの性質に分化がみられ,多様化しており,標的とする企業にも違いが見られることを示すものである。

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