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第117号(2022年3月) 株式市場研究会特集号

ファミリー企業の新規株式公開における
アンダープライシングの決定要因に関するサーベイ

船岡健太(九州産業大学商学部教授・当研究所客員研究員)
姚智華(九州大学大学院経済学研究院助教)

〔要 旨〕

 本稿においては,ファミリー企業の新規株式公開におけるアンダープライシングの決定要因について考察している文献のサーベイを行った。ファミリー企業は,多くの場合,特定のファミリー一族が支配株主であり,経営の舵も握っている。いくつかの先行研究では,このようなファミリー企業においては,エージェンシーコストが小さいという理由により,新規公開時のアンダープライシングの水準が低いという実証結果を報告している。また,新規公開企業が位置する地域の法的環境が良好な場合,オーナーの権利が保障され,ファミリー企業であることのシグナリング効果の信頼性が高まり,アンダープライシングが低減するという実証結果も提示されている。一方で,ファミリー企業は意図的にアンダープライシングを引き起こすことにより超過応募を発生させ,外部株主の誕生を限定的にとどめ,ファミリーがコントロールしている状況を維持するという実証結果を提示する先行研究もあり,ファミリー企業の新規公開におけるアンダープライシングの決定要因については,一致した見解が得られていない状況にある。今後においては,ファミリー企業の社会情緒的資産が新規公開時のアンダープライシングにおよぼす影響に関する研究を進める必要があると思われる。

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