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第118号(2022年6月)

資金不足と資金調達に関する意思決定

頭士奈加子(当研究所研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,米国企業を対象としたHuang and Ritter(2021)の示す資金需要の時間軸や持続性,資金用途と外部資金調達に関する意志決定との間の関係が,日本企業においても見られるかを,2009年12月から2021年12月までの日本の上場企業のデータを用いて検証した。検証の結果,即時,短期,中期の資金不足の順に資金調達の決定との関係が強いことがわかった。なお,この関係は事前の負債比率その他の企業特性よりも強く表れていた。また,負債発行と株式発行を比較すると,即時の資金不足に直面する企業は負債発行を選択する傾向が示された。さらに,比較的短期の資金需要と負債発行との間,比較的長期の資金需要と株式発行との間にそれぞれ強い関係があることが示された。最後に,負債発行企業は調達した資金をすぐ使用し,現金保有にはあまり回さず,株式発行企業は調達した資金を現金保有により多く回すことが示された。これらの結果は,Huang and Ritter(2021)の結果と概ね整合しており,資本構成のリバランスや現金保有量の増加よりも資金需要やその性質が負債や株式を発行する主な動機であり,観測される資本構成が期間ごとに行った資金調達に関する意思決定の結果であることを示唆している。

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