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第118号(2022年6月)

少額投資非課税制度(通称NISA)口座の非稼働の要因分析

上山仁恵(名古屋学院大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 2014年1月より,政府は「家計の安定的な資産形成の支援」,及び「成長資金の供給」を目的として少額投資非課税制度(通称NISA)を導入した。導入以降,NISA口座の開設数や買付額は着実に増加しており,NISA制度の利用は広がりを見せている。しかし,その稼働率は2020年9月現在において6割程度であり,半数近い口座が未稼働のままである。このような現状を踏まえ,本稿ではNISA口座の開設をきっかけに初めて証券口座を所有した人を対象に,その稼働・非稼働に与える要因分析を行った。その結果,NISA口座の稼働状況には金融リテラシーや金融経済教育の経験は影響しておらず,金融知識の自己評価や生活設計度が非稼働の要因になっていることが判明した。すなわち,NISA口座開設後の行動には,金融リテラシーの認知能力は問われておらず,金融に対する自信や貯蓄意欲等の金融コンピテンシーの非認知能力が問われることを示唆している。政府は2024年から新NISA(仮称)を始める予定であるが,NISA口座の開設促進を目的とした政府の広報や金融機関の宣伝方法については,金融コンピテンシー力の補強を念頭においた手法が推奨される。

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