第119号（2022年9月） テクノロジーと金融革新に関する研究会特集号
技術の進展と金融セクターの変化
—効率性と競争の視点から—
藤井眞理子（東京大学名誉教授･当研究所エグゼクティブ･アドバイザー）
- 〔要 旨〕
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本稿では，日本における主にリテイル分野の金融サービスを対象に，技術の進展が取引等のコストや効率性，競争と市場の構造にどのような影響を与えているかについて振り返り，海外事例に関する先行研究も参照しつつ，現状とその意義について考察する。まず，金融仲介コストや取引，情報入手のコストなどが継続的に低下してきていることを確認する。次に貸出におけるICTの進展の意義を検討し，情報分析とコミュニケーションの効率化との関連やテック企業との競争が銀行のIT投資に与える影響などについて論じる。市場の構造に関連しては，既存金融機関の業態においてもインターネットを活用した新たな形態の新規参入が継続・拡大するなど，競争を促す変化が進んでいることを示す。全体として変化の規模はまだ限定的ではあるが，政策も革新や競争を進める役割を果たしつつ，技術によってもたらされる金融の変化は継続して進行しており，最後の節でまとめと今後の課題を述べる。
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