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第119号(2022年9月) テクノロジーと金融革新に関する研究会特集号

ICOの残照—「有価証券」と「暗号資産」の境界線の再設定に向けて

加藤貴仁(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

〔要 旨〕

 ビットコインやICOは分散台帳又はブロックチェーンを用いた金融サービスの一事例に過ぎない。これらを契機として法改正が行われたが,その後も,分散台帳又はブロックチェーンを用いて新しい金融サービスが続々と開発されるという状況が続いている。本稿の目的は,このような状況に対してビットコインやICOを念頭に置いて構築された規制が適切に対応できるかを検証することである。具体例として本稿は令和元(2019)年の改正を取り上げる。令和元(2019)年の改正は資金決済法と金商法の双方を対象とするものであったが,その目的の1つはICOに関する規制を整備することであった。しかし,令和元年の改正は幾つかの課題を残している。これらの課題の検討を通して,ICOの規制における金商法と資金決済法の役割分担の合理性だけではなく,金商法と資金決済法の基本的な枠組みに再検討の余地があることが明らかになる。分散台帳又はブロックチェーンを利用した新しい資金調達の手段はICOに限らない。本稿は,新たな資金調達手段が今後も登場することを念頭に置いて,我が国の法制度がそれらに対応可能な枠組みを有しているかを検討することを試みている。

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