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第121号(2023年3月) ヨーロッパ資本市場研究会特集号

イングランド銀行の量的緩和からの出口戦略の変化と量的引締

斉藤美彦(大阪経済大学経済学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 2009年3月以来,量的緩和(QE)政策を行ってきたイングランド銀行(BOE)であるが,2021年12月以降において政策金利の連続的な引上げを行う一方で,2022年2月以降は量的引締(QT)を開始した。このQTは当初は満期到来保有国債の再投資を行わないことによるものであったが,2022年10月からは保有国債等の市中売却も行うとしていた。しかしながら,9月下旬のトラスショックにより,QTではなく臨時の長期国債購入(金融安定目的)を行わざるをえなかった。それでも11月以降は保有国債等の市中売却を行ってきているし,金融安定目的で購入した長期国債についても11月末以降に市中売却を行い,完了した。BOEの非伝統的金融政策からの出口はこれまで様々な形で模索され,挫折を余儀なくされた場合もあったが,BOEの出口戦略をオープンにしている態度は評価できる。また,政策金利がゼロ近傍を離れて以降の,バランスシート政策,異様に膨らんだそれをどの水準に落ち着かせるか,その後の危機対応にどのように対処するか等,BOEの金融政策には注目が集まるところである。その他の中央銀行同様に新時代の金融政策の原則の確立,新たなツールキットの開発等が望まれる。

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