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第121号(2023年3月) ヨーロッパ資本市場研究会特集号

欧州中央銀行の量的引き締め策に向けた論点整理

土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)副主任研究員)

〔要 旨〕

 2020年春,新型コロナウイルスの世界的な流行(パンデミック)が発生し,金融市場が大混乱に陥った。主要国の中銀は相次いで国債を中心とする金融資産を購入する資産購入策を強化し,経済と金融の安定に努めた。そのうち欧州中央銀行(ECB)の資産購入策は,米連銀や英中銀,日銀などと異なり,その導入の経緯から二本の柱から構成されていた。すなわち,一本目の柱が従前から実施されていた資産購入プログラム(APP)であり,二本目の柱がパンデミックを受けて導入されたパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)である。そのうちAPPについて,ECBは2023年3月より量的引き締め策を実施する。
 量的緩和に代表される資産購入策を採用したいずれの中銀も,その出口戦略に当たっては,国債に代表される金融資産をどの程度の規模,またどの程度の速度で圧縮するかという共通の課題を有している。加えてECBの場合,どの国の金融資産の保有を削減するか,あるいは再投資を優先するか,という現実的かつ宿命的な課題を有している。その分だけ,ECBの量的引き締め策は他の中銀以上に,戦略・戦術に緻密さと臨機応変さが求められる。

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