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第123号(2023年9月)

株主優待廃止が株主構成・株主数に与える影響

松浦義昭(金沢大学国際基幹教育院講師)

〔要 旨〕

 株主優待は,企業が一定数以上の株式を保有している株主に対して,物品あるいはサービスを進呈する制度である。企業が株主優待で提供する内容は,自社製品や自社サービスのほか,地域の特産品やカタログギフト,お米券やクオカード等の金券,社会貢献を用意する企業まで多岐にわたる。個人投資家にとって株主優待は投資の判断材料の一つとなっている。
 近年,株主優待を実施する企業数は増加する傾向にあったものの,2020年以降は3年連続減少となるなど,株主優待を見直す企業もでてきている。本研究は,この株主優待の廃止が株主構成・株主数に与える影響について分析を行っている。分析の結果,以下の点が明らかになった。
 第1に,株主優待の廃止企業に関して優待廃止の前年から優待廃止の当年にかけて,株主構成,株主数の変化を検証した結果,廃止企業の個人持株比率および個人株主比率については,統計的に有意な低下が確認できた。また,株主優待の廃止による個人株主数の変化についても統計的に有意な減少を示していることが確かめられた。
 第2に,株主優待が廃止される以前の優待内容(自社製品または非自社製品)を基準に優待の廃止企業を自社製品群と非自社製品群に分類して,廃止前後の株主構成や株主数の変化を検証した結果,自社製品群の個人株主数の減少と比較すると,非自社製品群の個人株主数の減少規模は大きいことが確かめられた。

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