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第124号(2023年12月) 日米資本市場研究会特集号

FRB・RRP・MMF
—資金余剰下の金利引き上げ—

伊豆久(福岡大学商学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 FRBは,リーマン・ショック以来10年を超える量的緩和政策によってバランスシートをほぼ10倍に拡大させた。そこに40年ぶりのインフレが発生し,余剰準備を抱えたままで大幅な金利引上げを余儀なくされている。
 その過程で,RRP(ONRRP)と呼ばれる,MMFからの事実上の預金が2兆ドル,FRBの負債全体の2割に達するという状況が生じた。中央銀行が,銀行券・準備預金・政府預金以外に,こうした大きな債務を負うのは異例と言ってよいであろう。本稿の課題は,このRRP拡大の背景と意味を検討することである。
 RRP拡大の原因は,一言でいえば,MMFと銀行の間で,十分な裁定取引が働かなくなったことである。その背景には,①政策金利の急速な引き上げ,②短期国債残高の減少という循環的要因,リーマン・ショック後の金融規制改革,具体的には③銀行への補完的レバレッジ比率規制の導入,④民間債務への投資が可能なMMFに対する規制の強化という構造的要因,そしてさらには,⑤米国金融市場におけるMMFの重要性の高まりというより長期的な要因があると言えるだろう。

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