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第125号(2024年3月)

完全子会社化の買収プレミアムと子会社少数株主の利益

川島亮太郎(京都産業大学大学院経済学研究科博士後期課程)

〔要 旨〕

 この研究では親子上場解消のための完全子会社化における親会社と子会社の一般株主の間の情報の非対称性や親会社の交渉力に着目し,完全子会社化の買収プレミアムの決定要因と取引条件の公正性について分析した。買収プレミアムの分析からは,子会社株式のアンダーバリュエーションが買収プレミアムの原資となっており,親会社が子会社株式の価値に関する私的情報を利用してプレミアムを設定している可能性が高いことがわかった。加えて,完全子会社化後の子会社の業績及び財務の建て直しに係る費用や法人ブロックホルダーの存在が買収プレミアムを引下げる要因となっていることなども明らかになった。さらに,完全子会社化により生じる価値の配分の分析によれば,子会社少数株主に配分される価値の比率は子会社少数株主の持株比率を概ね上回っており,親会社が一方的に自己に有利な条件を設定し少数株主の価値を毀損している証拠は見出されなかった。
 但し,価値の相対的配分比率の要因分析からは少数株主に有利な裁判所の決定や親子会社の交渉力に関する指標が価値の配分に影響を与えていることが窺える。従って,今後も上場子会社の少数株主保護のための施策が維持,拡充されていくことが望ましい。

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