1. TOP
  2. 出版物・研究成果等
  3. 定期刊行物
  4. 証券経済研究
  5. 第127号(2024年9月)

第127号(2024年9月)

「集団的確定拠出年金(CDC)」による企業年金改革

田近栄治(一橋大学名誉教授)
山田直夫(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,日本の企業年金改革の一つの指針として「集団的確定拠出年金(CDC:Collective Defined-Contribution plan)」(以下,CDC) を検討し,そこから得られる示唆を明らかにすることである。CDCについては,オランダの企業年金やイギリスのRoyal Mailで改革が試みられており,その柱は
 ・確定給付型企業年金の廃止,確定拠出型年金への一本化
 ・確定拠出型年金を一体化した集団的運用
である。
 本稿ではこの二つの改革について検討を行う。そこから得られたわが国への示唆は以下のとおりである。
 まず,企業年金と個人年金からなる私的年金による給付をどう設定するかである。具体的には,税制適格とする私的年金によって目指す,給付の給与代替率を定める必要がある(田近・山田,2023)。その上に,大幅な引き上げを含む,私的年金の非課税拠出枠の設定を行わなければならない。
 第2に日本の企業年金改革において退職一時金をどう扱うかという問題がある。老後の所得保障および税制上の観点からは,退職一時金制度を確定拠出型の企業年金として扱い,その運用はそのほかの企業年金と合わせて,管理することが考えらえる。
 第3に,このように企業年金の範囲をできるだけ包括的にしたうえで,確定給付型年金と確定拠出型年金の線引きを行う必要がある。具体的には,両者の併存を認めるのか,確定給付型年金を廃止し,確定拠出型年金に一本化するのか検討する必要がある。
 第4に企業年金の給付水準を高め,同時に投資リスクに備える仕組みを強化する必要がある。そのための重要な仕組みがCDCであり,オランダやイギリスなどの取組を早急に詳しく検討する必要がある。

  • facebook
  • twitter
  • line

タグ

  • 新年金法(Dutch Future of Pension Act
  • WTP)
  • Royal Mail
  • 連帯拠出プラン(Solidarity contribution scheme)
  • アセットオーナー・プリンシプル
  • 集団的確定拠出年金(CDC:Collective Defined-Contribution plan)