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第127号(2024年9月)

上場子会社とパフォーマンス:
内生性を考慮したアプローチ

川本真哉(南山大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 本稿では,2000年代以降の上場子会社のパフォーマンスについて,子会社上場の状態が内生変数である可能性を想定して,因果関係の特定化を試みた。分析の結果,以下の点が示された。まず,プールド分析とパネル分析からは上場子会社ダミーはいずれの期間でもROAに対して有意に正の値を取っていることが明らかにされた。上場子会社の財務パフォーマンスは良好であるということであり,これは先行研究と整合的な結果である。もっとも,上場子会社を含む説明変数が内生変数であることを考慮したシステムGMM推計においては,財務と株価パフォーマンスのいずれに対しても,上場子会社ダミーの係数は有意な値を取らなかった。また傾向スコア分析により,上場子会社と特性が近似した企業をリファレンスグループとして比較した結果,グループガイドラインが公表された2019年前後において,パフォーマンスが改善したとも下降したとも判断できないこともわかった。これらの分析結果からは,先行研究におけるパフォーマンスに対する上場子会社の正の効果は,逆の因果(パフォーマンス→子会社の上場の維持)がコントロールされていないことに起因する,バイアスが除去できていなかったことからくる結果だと考えられる。

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