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第127号(2024年9月)

米国のファイナンシャル・ウェルビーイング

沼田優子(明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 本論文は,米国における「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の理念,その歴史的展開,現状を概観し,金融教育者やファイナンシャル・アドバイザー等が提供する支援策について報告するものである。米国では,消費者金融保護局(CFPB)が2015年にファイナンシャル・ウェルビーイングを定義し,それを実現するための研究と取り組みを進めてきた。CFPBは,ファイナンシャル・ウェルビーイングを「現在および将来の金融面での義務を十分に果たし,金融面における将来に安心し,人生を楽しむための選択ができる状態」と定義し,これを達成するための日常的な金融行動や金融能力の重要性を指摘している。当初は金融教育の新たなゴールとして始まったファイナンシャル・ウェルビーイング研究であるが,これに到達するまでの要素が明らかになるにつれ,確定拠出年金の加入者向け投資教育・アドバイスや,ファイナンシャル・アドバイザーの提供する富裕層向け投資アドバイスにも,様々な視座をもたらすようになった。こうした米国の事例に倣えば,我が国においてもファイナンシャル・ウェルビーイングへの到達を支援するためには,金融行動の変容に対する支援が必要で,金融教育と投資アドバイスは地続きとなっていこう。

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