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第128号(2024年12月)

公的機関による投資者の救済
—米国のフェア・ファンドと台湾の投資者保護センターを題材として—

高逸薫(当研究所研究員)

〔要 旨〕

 本稿は,日本における一般投資者保護の強化を目指し,米国のフェア・ファンド制度および台湾の投資者保護センターを参考に,公的な投資者救済制度の在り方を検討したものである。米国のフェア・ファンド制度は,違法行為者から徴収した課徴金や利益吐出し金を被害投資者に分配して迅速に救済を図る仕組みであり,台湾の投資者保護センターは,投資者の代理で訴訟を提起し,企業ガバナンスの強化にも貢献するなど,投資者保護に直接的な役割を果たしている。
 日本でも,アメリカや台湾の事例を基に,投資者の被害救済を支援する公的な投資者被害救済機構の設立について議論を進める必要がある。特に,課徴金の分配が必要であるだけでなく,課徴金だけでは被害を完全に回復することが困難な状況を考慮し,投資者救済のための公的機構が被害者に代わって損害賠償請求訴訟を提起するなどの役割を遂行することを検討する必要がある。ただし,公的機構が企業経営に過度に関与することを防ぐために,機構の役割と救済範囲を適切に設定する必要がある。
 したがって,本稿ではアメリカと台湾の事例を分析し,日本の資本市場環境に適した公的投資者被害救済機構の設計上の課題を検討し,制度設計の方向性を提示した。今後も継続的な議論を通じて,統合的かつ体系的な被害救済システムを構築し,投資者が迅速かつ効率的に保護される環境を整備することで,日本の資本市場が持続可能な成長の基盤を築き,さらに発展していくことを期待する。

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