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第128号(2024年12月)

個人投資家の選好,金融リテラシーとリスク資産投資
—個票データによる分析—

高岡慎(琉球大学国際地域創造学部准教授)
藤井眞理子(東京大学名誉教授)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,日本証券業協会が実施しているアンケート調査『個人投資家の証券投資に関する意識調査』の個票データ(2018~2022年)に基づき,近年家計の広範な金融市場参加のために重視されている金融リテラシーにも着目しつつ,個人投資家のリスク資産投資に係る意思決定に関連する要因について実証的に明らかにすることにある。具体的には,個人投資家の保有金融資産総額に占める株式の比率をリスク資産投資の程度を表す指標と定義し,投資家個人の属性やリスク選好,時間選好,金融リテラシーなどとの関連性について統計的分析を実施した。分析の結果,(ⅰ)リスク資産投資の意思決定はリスク選好と強い関連があり,リスクに対する許容度が高いほどリスク資産への投資比率が高くなる傾向があること,(ⅱ)金融リテラシーは直接にリスク資産投資を左右するというより,リスク選好との関連を通じて間接的にリスク資産投資とプラスの関係にあること,(ⅲ)一定の金融リテラシーを有していることがリスク選好とリスク資産投資との間の安定した関係の基礎となっていると考えられること,が明らかとなった。また,投資家の年齢やジェンダーも,リスク選好やリスク資産投資と関連していることが認められた。

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