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第128号(2024年12月)

アジアにおける国際金融ネットワークの動態
—ネットワーク分析による観測—

山口昌樹(山形大学人文社会科学部教授)

〔要 旨〕

 通貨危機後にアジア諸国が協働した制度構築がアジアの貯蓄をアジアへの投資へ向かわせる域内資金循環の成長に結びついたかという疑問が本研究の動機付けの1つである。また,米国における利上げが新興国からの資金流出を引き起こしおり,アジアの域内資金循環が収縮したのではないかという懸念も本研究の動機である。これらの疑問に答えるため本研究はアジア諸国における国際金融ネットワークの動態についてネットワーク分析を適用して観測した。
 分析の結果,第一に2015年以降にアジア諸国の対外投資は相対的に大きな伸びを示し,対外調達は対外投資ほどではないもののマレーシアを除き増加した。アジア諸国が資金の出し手へと変化した側面を確認できた。第二に,固有ベクトル中心性によって国際金融ネットワークでの重要性を測定したところ,米国の利上げにも拘わらずアジア諸国の地位が後退した兆候は見られなかった。また,アジア諸国は日米を中心とする国際金融ネットワークに組み込まれていることがコミュニティ抽出により判明した。第三に,ネットワークの凝集性を測定する密度によって域内資金循環の動態を観測し,域内資金循環が増加したこと,さらに,アジア諸国による域内資金循環が運用面では米国に匹敵すること,調達面では域内調達の比率が上昇したことが分かった。

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