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第129号(2025年3月) テクノロジーと金融革新に関する研究会特集号

通貨・保険・証券の性格を併せ持つ分散型資産の理論的可能性

戸村肇(早稲田大学政治経済学術院教授)

〔要 旨〕

 2008年のビットコインの登場以来,ステーブルコインを含む暗号通貨は法定通貨に代わる決済手段として期待されたが,その役割を果たすには至っていない。現在の暗号通貨は,法定通貨との交換をしやすくする方向で発展している。本稿では,それとは逆に,法定通貨との交換を制限することが,「お金では買えない価値」の保蔵手段として既存の金融システムを補完する新しい資産を生成する上での鍵になるという理論分析結果を報告する。
 具体的には,他者からの労働供給が必要となる生活リスクの個人間共有に焦点を当て,介護を例にした以下のような理論分析を紹介する。介護労働の提供者に,暗号通貨のようなプログラムが自動的に介護ポイントを付与することを考える。また,介護サービスへの支払いには介護ポイントを必要とし,介護ポイントを介護労働との引き換えに限り獲得できるようにする。そうすると,介護ポイントの転々流通により,各世代内での要介護リスクの共有と,要介護リスクが具現化する前の健常者への介護労働供給インセンティブの付与を同時に達成できることが示される。この仕組みは,他者からの労働供給が必要となる生活リスク一般に応用できる。
 上記の介護ポイントは,転々流通による通貨性とともに,介護サービスを受ける権利の表象という意味での広義の証券性も持つ。また,保険者による仲介なしに個人間相互保険が可能になるという意味で,分散型資産とも言える。

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