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第13号(1998年5月)

我が国の機関投資家による株式取引の現状
―ファンドマネージャーへのアンケート調査―

吉川真裕(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 改正外為法の施行に伴って本年4月1日から日本版ビッグバンがついに始まった。従来は資金調達者や仲介業者が中心であった我が国の株式市場でも日本版ビッグバンによって資金提供者や資金運用者の重要性が高まり,とりわけ世界的に進展する株式市場の機関化という趨勢のもとでは機関投資家の役割がますます重要となるものと考えられる。資金提供者や資金運用者の要望をできる限り採り入れていくことが日本版ビッグバンの核心と考え,機関投資家の要望を幅広く集め,株式市場の制度改革に資することを目的として,当研究所では先頃アンケート調査を実施した。
 本稿では,このアンケート調査の結果を紹介し,株式市場の機関化という世界的な趨勢のもとで今後ますます成長すると考えられる我が国の機関投資家が,現在の取引制度をどのように評価し,どのような取引制度改革を望んでいるのかを明らかにする。また,この種のアンケート調査はすでにアメリカとヨーロッパで実施されており,我が国での結果 をこれらの結果ともできる限り比較検討した。
 今回のアンケート調査ではアメリカやヨーロッパに比べると流動性をかなり重視した我が国のファンドマネージャーの現状が明らかになったが,これは従来の取引制度における欠点の反映とも考えられる。アメリカやヨーロッパでは機関投資家による株式保有比率の上昇や株式売買シェアの上昇といった株式市場の機関化が趨勢的に進んでおり,我が国でも企業による株式相互持ち合いの後退と相俟って今後はこうした傾向がますます強まっていくものと考えられる。内部調査体制の充実や忍耐強い注文執行姿勢の強化など,機関投資家の側にもまだまだ改善すべき点はいくつもあると思われるが,好むと好まざるとに関わらず,こうした株式市場の機関化に即した体制の整備が望まれる。

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