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第14号(1998年7月) シンガポールの証券市場

世界におけるアジア経済

相沢幸悦(長崎大学教授・当研究所兼任研究員)

〔要 旨〕

 1997年7月,タイの通貨バーツの変動相場制への移行を契機にして,アジアの通 貨危機が東アジア全域に波及した。1980年代末から90年代にかけて,東アジア地域は,未曾有の高度経済成長ブームにわいた。21世紀は東アジアの時代であるとまで豪語された。しかし,自国通 貨をドルにリンクさせて外資を導入した脆弱な経済成長であったために,「バブル経済」が生じ,それが崩壊するのは必然的帰結であったのであろう。一部の研究者はこの「バブル経済」に警告を発したものの,筆者を含めて多くは,その本質を見抜くことはできなかった。
 今こそ,1980年代末から90年代にかけての東アジア経済成長の本質を明らかにし,21世紀に向けて東アジア経済を発展させ,国民の生活水準を向上させていくためにはどうしたらよいかということを真剣に考えなければならない。
 そこで,本稿は,アジア経済の発展にとって不可欠な中国とベトナムの「体制の転換」のプロセスについて,次にアジア経済の脆弱性および1998年の通 貨・金融危機の背景と本質について,そして,ヨーロッパで進む通貨統合の動きとそれに呼応して進む,産業・企業再編について明らかにする。1999年1月からヨーロッパで単一通 貨ユーロが導入されると,いずれアジアでもドルと並ぶ決済通貨として使用されるようになることは明らかである。通 貨統合参加諸国の経済力はアメリカに匹敵するものだからである。このまま事態が進展すれば,円は21世紀にローカル通 貨になってしまう。我が国はヨーロッパの生き方に深く学ぶ必要があるのではなかろうか。

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