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第15号(1998年9月)

東京オフショア市場の開設と内外金利統合について
―短期金融市場金利とユーロ円市場金利の長期的関係―

原田喜美枝(東京研究所研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,日本の金融規制緩和が短期金融市場に与える影響について,短期金融市場金利と東京オフショア市場金利の間の因果 関係を計量的に考察した。ユーロ円金利3ヶ月物とオープン市場のCD金利3ヶ月物,債券現先利回り3ヶ月物の標本数2809の日次データを用いて,東京オフショア市場が創設された1986年12月から1998年5月末までの期間で分析を行った。
 両市場金利の2変量での実証分析を行った結果,ユーロ円金利と国内短期金融市場金利は共和分しており,長期的に相互依存する関係にあることがわかった。短期の動きをモデル化する誤差修正モデルを用いて調べた結果 からは,ユーロ円金利は国内短期金融市場に大きな影響を及ぼすことが示された。一方,国内短期金融市場ではCD金利のみがユーロ円金利に影響しており双方向の因果 関係が確認された。国内短期金融市場とオフショア市場の金利に見られる因果 関係の違いは,国内市場に規制が存在するために効率的な市場の形成が阻害されていることがひとつの原因であると考えられる。また,1980年代後半から1990年代後半にかけて構造変化が存在し,因果 性に変化がみられた。多変量共和分の検定結果より,2個の共和分が存在し,ユーロ円金利,CD金利,債券現先利回りの各金利が共和分の関係にあり,一次元的な動きをしていることが示された。
 さらに,観察された構造変化に基づいた誤差修正モデルによる分割標本分析を行った結果 ,債券現先利回りと他の金利の乖離が縮小する後半期間において,債券現先利回りからユーロ円金利に向けての因果 性が観察された。また,すべてのモデルにおいて,前半期間よりも後半期間にオフショア市場と国内短期金融市場の統合の度合いが増したことも明らかになった。この結果 は金融規制緩和が段階的に行われてきたことと整合的である。

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