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第17号(1999年1月)

イギリスにおけるレポ市場の創設とギルト債市場の効率性(下)

須藤時仁(東京研究所研究員)

〔要 旨〕

 イギリスでは,96年1月にギルト債(国債)のオープン・レポ市場が創設され,更に97年3月からはギルト・レポがイングランド銀行の日々の金融調節手段に加えられた。レポ取引とは,証券の保有者が資金の保有者に対して証券を将来買い戻すという合意の下に売却する取引であり,在庫証券のファイナンスや空売りした証券の手当てなど,非常に活用範囲の広い取引手法である。イギリス政府はこのオープン・レポ市場を導入するにあたり,ギルト債の貸借市場への参入規制緩和と債券に係る利子課税制度の改革を行った。特に税制に関しては,97年12月のストリップス債導入とも相まって,利子所得に係る源泉徴収が実質的に撤廃されるなどの大改革となった。
 レポ市場は創設以来順調に拡大し,その残高は96年2月末の367億ポンドから98年5月末には749億ポンドへと,約2倍の規模になっている。しかしながら,欧米の主要国では早くから債券のレポ取引が取り入れられていたにもかかわらず,なぜヨーロッパ金融取引の中心地であるイギリスでその導入が90年代半ばまで遅れたのだろうか。レポ市場を導入した意図として,イギリス政府はギルト債市場への参加者拡大と市場効率の促進が目的と説明している。しかし,政府の見解を逆に解釈すれば,95年以前のギルト債市場が非効率的であったことになり,これではやはり,90年代半ばまでなぜレポ市場が導入されなかったのかという疑問に戻ってしまう。そこで,これに対立させる仮説として「EMU(欧州通 貨統合)対応説」を提唱したい。99年以降,EMU体制の下で欧州中央銀行(ECB)が行なう金融調節の中心手段は2週間物の債券レポ取引とされている。一方,イギリスは当面 EMUに参加しない意向だが,ECBの金融政策に適切に対応するためにはレポ市場を整備してイングランド銀行の金融調節手段に組み込む必要があった,というのがEMU対応説である。(以上,本誌16号)
 EMU対応説を直接に検証することは困難であるため,95年以前の国債市場の効率性について,計量 的手法を用いて,英米独で比較した。その結果,政府の見解は棄却され,EMU対応説が浮かび上がった。この仮説に立脚した場合,重要なことはレポ市場をイギリスの金融市場全体の効率性に機能するように組み込むことであろう。(以上,本号)

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