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第20号(1999年7月)

金融不安下の円・ドル相場の規定因
―ジャパン・プレミアムの拡大と円キャリー・トレード―

奥田宏司(立命館大学教授)

〔要 旨〕

 (1)1997年・第4四半期における三洋証券,北海道拓殖銀行,山一証券の破綻は,国内短期金融市場のシュリンク,ジャパン・プレミアムの拡大をもたらし,日本の国際収支構造を「異常」に変化させることになった。すなわち,国内短期市場の混乱は対外証券投資の中断,引き揚げを引き起こし,ジャパン・プレミアムの拡大は,邦銀本店による海外支店への多額の送金を余儀なくさせた。かかる状況のなかで円安が進行した。
 (2)邦銀による海外支店への外貨送金のかなりの部分はスワップ為替取引によって行われたが,これはジャパン・プレミアムの存在の下で金利裁定メカニズムに変調をもたらし,「余分」の直先スプレッドを発生させ,邦銀にとってはジャパン・プレミアムと「余分」のスプレッドとの裁定となり,ジャパン・プレミアムを存続させることになった。
 (3)金融不安下の日米金利差と円安の進行は,ヘッジファンド等によるアウトライト先物為替・オプション取引の利用,ユーロ円借入等による「円キャリー・トレード」だけでなく,国内機関投資家等による円をドルに替えての邦銀への外貨預金を増大させ,これが邦銀による海外支店への外貨送金の原資の一部を構成した。
 (4)また,邦銀から海外支店への円送金は,海外支店によるドルへの転換により外貨資金調達の原資となるとともに,海外の投機家等へのユーロ円貸付(「円キャリー・トレード」に利用)の原資になった。
 (5)小論第3図は,以上の資金フローに関連する為替取引を概括し,97年・第4四半期における円安の主要因を明らかにしている。

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