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第21号(1999年9月)

カレンシー・ボード制の導入方法と通貨投機に対する抵抗力
―香港に対する「3極通貨バスケットCBA」の提案―

山下英次(大阪市立大学助教授)

〔要 旨〕

 カレンシー・ボード制(CBA)は,それ自体が有する金本位制に似た種々の自動調整機能によって固定為替相場制を守ろうとするシステムである。すなわち,通 常の固定相場制と異なり,市場介入によってではなく,市場メカニズムを利用することによって,予め定めた固定平価を守ろうとする制度である。したがって,CBAを導入しようとする国は,通 貨金融当局の裁量の余地を極力少なくし,CBAディシプリンに忠実にしたがって運営されるように,予め強固な法的枠組み等を整えておかなければならない。
 1997年7月のアジア通貨危機の発生以来,香港は4波にわたる投機攻撃を受けた。とりわけ,1998年8月のヘッジファンドによる「ダブルマーケット・プレイ」と呼ばれる極めて激しい第4波の投機攻勢を香港が乗り切ったことは,香港金融当局による対応の正しさに加え,一般 論としてのCBAの投機に対する抵抗力,体制維持能力の高さを改めて証明したものといえるであろう。
 1998年9月以来の一連の強化策によって香港のCBAはかなり強化されたものの,まだなお改善の余地は残されている。現状のように,世界の主要通 貨がフロート制の下にあるなかにあって,単一の主要通貨に対して独占的にペッグすることは,いわば「3分の1固定制,3分の2フロート制」を採用しているようなものである。このため,香港の実効為替相場は,時としてかなり大きくスウィングすることになり,国際競争力の安定性などの面 で問題が生じる。
 香港がこうした問題を解決するための方法として,筆者は「3極通貨のバスケットをベースとしたカレンシー・ボード制」を提案したい。その際のバスケットの中味は,香港の対外経済関係の実態を正しく反映させて,「円:ドル:ユーロ=40%:30%:30%」とするのが望ましい。

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