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第22号(1999年11月) 機関投資家とコーポレート・ガバナンス

コーポレートガバナンス論と経済システム論
―議論の整理と現代日本への1つの評価―

伊藤修(埼玉大学教授)

〔要 旨〕

 本稿は,まず前半で,コーポレートガバナンス論および経済システム論の主要な議論を概観し,またそれらの国際比較に関する実証分析の成果 を若干紹介する。ここで特に言及しておきたいのは,通常高く評価される日本のメインバンクの情報生産能力についての疑問である。
 後半では,1990年代に入って急激に露呈された日本の社会経済システムの問題点を,できるだけ優劣評価から離れて考察する。具体的には,環境条件の大幅な変化により既存のシステムとの齟齬が生じたケースとして,主として金融における裁量 的行政指導システムの破綻と,組織トップの「無責任体制」(権限と責任の不明瞭さ)の露呈を取り上げる。前者では,裁量 的行政が対象企業(金融機関)および国民(利用者・納税者)に受容されてきた条件が高成長にあり,その条件消失への対応の遅れが破綻の原因であることを論ずる。後者では,職務分担の比較的不明確なホワイトカラー組織において,権限と責任が上下および他組織との関係の文脈の中でのみ規定されるという曖昧さが,危機に際しての無責任な体制となって現れることを論ずる。

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