第22号(1999年11月) 機関投資家とコーポレート・ガバナンス
アメリカの州・地方公務員年金の投資行動とコーポレート・ガバナンス
秋山義則(滋賀大学教授)
- 〔要 旨〕
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アメリカの州・地方公務員年金の成熟化と州法による投資規制の緩和およびエリサ法によるプルーデント・マン・ルールの州法化の普及が,公務員年金の株式投資を活発化させる要因となった。また,資産規模の大きな公務員年金は株式投資額が大きく,その半分以上は長期保有を前提としたインデックス運用である。このため保有株式の売却は困難であり,投資先企業に不満がある場合には積極的な株主行動を行う傾向がある。そうした積極的な株主行動が行えるのも,企業年金とことなり公的部門に属する公務員年金だからこそである。以上は,公務員年金がコーポレイト・ガバナンス活動を積極的に行う理由を公務員年金の投資行動の側から説明したものである。
しかし,公的部門に属するからこそ公務員年金は拠出者としての州・地方政府から介入を受けやすいのである。特に,公務員年金の株主行動が州内の有力な大企業を対象に行われ,それらの企業からクレームがつく場合には,州サイドは公務員年金の株主行動を抑制するような対応行動をとる傾向があるのである。これは公務員年金のコーポレイト・ガバナンス活動は無制約ではなく,州の経済にとって無視しえない大企業への配慮を行うという観点から,州サイドが公務員年金のコーポレイト・ガバナンス活動に制限を加える場合があることを示唆している。