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第23号(2000年1月)

ドルの過剰と日銀信用
―国際的管理通貨制度の研究―

宮田美智也(金沢大学教授)

〔要 旨〕

 アメリカの財政収支は昨年度黒字化を達成した。しかるに,日本では財政赤字が深刻である。本稿はその事実の持つ意味を明らかにすべく,ドル政策に対応する円政策のいかんという観点から日本の管理通 貨制度の分析を目指す。
 管理通貨制度下の国際通貨制度は変動為替相場制度の上に成り立ってはじめて論理的に整合的となる。事実,70年代になると,国際通 貨ドルがその基礎とする為替相場制度は変動相場制度に移行する。背後にはドルの過剰供給があった。そうしてアメリカは80年代半ば債務国へ転落し,ドル政策の運営に一定の制約を課されるに至る。ドルを日米独を主軸に国際協調的に管理するというプラザ合意体制が,85年秋から86年初夏にかけて形成される。それは理論的に国際的管理通 貨制度という内容を持つ。しかし,88年夏にはそこからドイツが離脱し,その制度は事実上日米2国によるドルの共同管理制度へと変質する。
 日本の管理通貨制度(円政策,日銀信用供給)は当然国際的管理通貨制度に影響される。それを論じるために,まず日銀の信用供給方法が貸出,国債買い上げ及びドル買い上げの3つの方法として理論的に整理され,それらが国際的管理通 貨制度段階的に,後2者を基礎としてその上部に前者の貸出が位置付けられる。そして,70年代前半と80年代後半における管理通 貨制度の実際が考察され,最後に最大の債権国化した日本が俎上に載せられる。円建てではなくドル建ての債権国であることから,債務国アメリカへの付加価値移転(債務者利潤の発生)を強いられる立場にあることが導き出される。

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