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第25号(2000年5月)

戦前朝鮮の証券市場

金珍奎(大阪市立大学大学院)

〔要 旨〕

 従来から行われてきた韓国の証券市場に関する研究は,ほとんど歴史や制度の紹介などの断片的なものにとどまっている。しかも,現在のソウル証券取引所が設立された1956年以降の証券市場を研究対象としている。したがって,韓国の証券市場に関する研究は,多くの課題を残したままであり,これから多角的分析が必要な分野であると考えている。
 このような問題意識から,とりあえず,本稿は,戦前植民地期(1910〜45年)における朝鮮の証券市場を取り上げ,この期の証券市場の性格を明らかにする。そのために,本稿では,朝鮮の植民地期に存在した三つの証券取引所である「京城(現在のソウル)株式現物取引市場」(1920年〜31年),「朝鮮取引所」(1932年〜43年),「朝鮮証券取引所」(1943年〜45年)の発展過程を検討する。
 あらかじめ本稿の結論を述べておくなら,次のとおりである。
 戦前朝鮮の証券市場は,日本の朝鮮進出によって大きな影響を受けつつあった。とくに,1930年以降,日本資本によって進められた朝鮮の工業化は,本格的な証券市場の拡大を促す結果 となった。しかし,証券市場の拡大といっても,株式流通市場のみの拡大であった。つまり,株式発行市場はほとんど形成されず,また,債券は日本内地の起債市場で発行されたのである。しかも,株式の取引方法は,短期清算取引を中心としており,その取引対象は,取引所株に集中された。したがって,戦前朝鮮の証券市場は,本来の証券市場の機能である資金調達の場であったとは言えず,単なる短期清算取引による投機の場であった。

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