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第26号(2000年7月) 市場間競争の諸側面

わが国における取引所外取引の現状と課題

横山淳(大和総研制度調査室課長代理)

〔要 旨〕

 1998年に取引所集中義務が撤廃されてから1年以上が経過した。1999年の上場株券取引に占める取引所外取引の割合は売買数量 ベースで8.19%に達している。
 取引所外取引の位置付けについては大きく二つの方法が考えられる。一つは,市場相互をリンクさせることによって全体をあたかも一つのメタ(上位 )市場として機能させる方法(市場間リンク型),もう一つは,中心となる支配的市場の存在を認めた上で,他の市場についてはその中心市場と関連付けられた衛星市場として位 置付ける(衛星市場型)というものである。わが国は基本的に後者のアプローチを採用している。その結果 ,顧客からの指示がない場合の取引所外取引の禁止,立会時間中における取引所外取引の価格制限などの規制が課せられている。
 取引所集中義務の撤廃が,わが国の証券取引所に危機意識を喚起したことは疑いない。東証・大証・名証は立会外取引の導入など,市場の利便性向上を図る様々な改革に取り組んでいる。
 一方,地方証券取引所は主要証券取引所の立会外取引導入や取引所外取引解禁により大きなダメージを受けた。1999年の上場銘柄取引に占める割合は5取引所合計で0.20%まで落ち込んだ。そうした状況下,広島・新潟証券取引所は2000年3月,東証に合併されるに到った。
 取引所外取引の課題としては,報告に関する「5分間ルール」の運用を巡る透明性の問題,銘柄の流動性を考慮しない売買金額別 の価格制限の当否,市場間の情報リンクの不存在などが指摘されている。この第三の点については,日本版NMS,市場間オークションといった構想が各方面 から提起されている。具体化に当たっては様々な問題があるが,今後,日本版ECNなどを通 じてリーテイルの取引所外取引が増加すれば,衛星市場型から市場間リンク型への移行の議論は避けて通 れないであろう。ともあれ,取引所外取引を含む健全な市場間競争を通 じてわが国証券市場が一層発展することを望みたい。

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