第27号(2000年9月)
ドイツ証券取引所のXetra
吉川真裕(大阪研究所主任研究員)
- 〔要 旨〕
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1997年11月28日,ドイツ証券取引所は従来の電子取引システムIBISに替えてXetraを導入した。この際のXetraはドイツ証券取引所のめざす取引システム電子化プログラムの第2段階(リリース2)に当たり,1998年10月12日には第3段階に当たるXetraリリース3へと移行し,電子取引システムによるドイツ証券市場の統合は一層進展することになった。そして,2000年5月12日には非公式市場(店頭市場)で取引されるカバード・ワラントを対象としたXetraリリース4も導入されている。
Xetraは株式取引では3分の2,国内株式に限れば4分の3の取引シェアをすでに獲得しているが,債券とワラントでは取引シェアはいまだ5%にも満たない。株式取引は1997年11月に導入され,債券取引は1998年10月,ワラント取引は2000年5月に導入されたという時期の違いもあるが,これは債券取引やワラント取引ではまだ十分な時間がなく,市場参加者もまだ不慣れであるというよりも,取引対象の流動性に原因があるものと考えられる。
株式取引をさらに細かく分けてXetraの取引シェアをみると,DAX指数構成銘柄で83.2%,MDAX指数構成銘柄で36.9%,Neuer Markt銘柄で22.9%,SMAX銘柄で13.5%,外国株で4.8%とXetraの取引シェアには大きな開きが存在する。このことからXetraは高流動性銘柄では定着しているが,低流動性銘柄ではそれほど用いられてはいないということが考えられる。したがって,個々の銘柄の流動性の低い債券やワラントでもXetraの取引シェアが低いこともそれほど不思議ではない。
低流動性銘柄に関してXetraを通じた取引が拡大するかどうかは明らかではないが,高流動性銘柄に関してはすでにXetraはDAX指数構成銘柄で十分な実績を上げている。この点ではXetraがiXの取引システムとしてヨーロッパの優良銘柄の取引を担うということについては全く心配はいらないだろう。