第27号(2000年9月)
債券税制は現先市場にいかなる影響を与えているか
中島将隆(甲南大学教授)
- 〔要 旨〕
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平成11年度の税制改革によって,債券市場に関連する重要な税制度の改革が行われた。改革内容を整理すると,まず,有価証券取引税が平成11年3月末をもって廃止されたことである。次に,非居住者・外国法人が受け取る登録国債の利子も源泉徴収を免除されることになった。免除の適用は平成11年9月1日から適用される。更に,政府短期証券と短期国債の償還差益に対する源泉徴収は平成11年4月1日から廃止された。第四に,平成13年1月から指定金融機関等の登録国債の源泉徴収免除は一括登録国債に限定され,個別 登録国債は除外されることになった。
平成11年度の税制改革は,今後の現先市場に極めて重要な影響を与えるだろう。有価証券取引税の廃止によって課税債券と非課税債券の区別 が消滅した。債券取引に関わる流通税が廃止され,課税コストの問題は解決されたのである。また,有価証券取引税の廃止によって売買形式のレポ市場を創設することが可能になったのである。
源泉徴収制度も変更され,非居住者・外国法人が受け取る登録国債の利子は源泉徴収免除となり非課税扱いになった。これまで非居住者は源泉徴収を回避するため,名義貸し利用を行ってきた。今回の改革によって名義貸し利用の必要は無くなり,名義貸し利用に伴う信用リスクは回避することが出来るようになった。
償還差益に対する源泉徴収の免除は政府短期証券や短期国債の流動性向上に寄与する。源泉徴収免除と同時に,政府短期証券は平成11年4月から市中公募で発行されるようになり,募集残の日銀引受は例外的な扱いになった。政府短期証券の公募化に対応して,平成11年3月から日本銀行は政府短期証券の売りオペと短期国債の買いオペを統合して短国現先オペとした。源泉徴収免除と政府短期証券の公募入札発行により現先売買は従来とは異なる展開になると思われるのである。
このように,税制改革によって現先市場は新たな局面を迎えることになった。
本稿では,税制改革の意義を明らかにし今後の展望を得るために,これまで債券税制は現先市場にどのような影響を与えていたか,その歴史と現状をみていくことにする。現先取引に係る税制は,有価証券取引税,現先で売買される債券の経過利子に対する源泉徴収,現先収益に対する課税,政府短期証券や短期国債の発行時源泉徴収である。これらの税制度が現先市場にどのような影響を与えてきたか,実証的に検討し,論点の整理を行いたいと思う。