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第27号(2000年9月)

ポストビッグバンの投資銀行業務の在り方について

川村雄介(長崎大学教授)

〔要 旨〕

 金融環鏡の激変の中で,規制緩和,IT革新の進展したポストビッグバンの投資銀行業務に期待されるのは,発行体,投資者双方に対するトータルな財務ソリューション機能である。
 伝統的引受業務のうちデット引受については,従来にも増した精緻な市場分析と条件決定の適確さに加え提案能力と販売力がポイントになる。また,IT化に伴ってネット起債への対応も必要である。エクイティ引受に関しては,新規公開業務への注力,条件決定能力の涵養,グローバル・オファリングヘの対応,販売力の強化とともにここでもネット・ファイナンスヘの備えが重要課題である。いずれの業務にあっても手数料水準等の低下傾向の中で,より高付加価値のビジネス展開が望まれる。
 新しい投資銀行業務については,証券化関連業務とM&A,および性格的には伝統的業務であるがIPOに注目したい。証券化関連業務では法制面 の整備と銀行不良債権処理の一巡が証券化の意味内容を変質させつつあり,証券業者にとっての本格的展開を可能とする環境を作り出している。証券化関連業務は金融取引のunbundleを特徴とするが,証券業者としては再証券化とセカンダリー市場の整備が課題であるし,unbundleした各取引を再度統合していくサービス提供の意義も大きい。なお,この分野に限らず,インベスタードリブンの業務が増加しているが,これが直ちに発行サイド軽視を意味するものではない点に留意すべきであろう。
 M&AとIPOは急成長分野であって,いずれも今後の投資銀行の中核業務である。前者についてはクライアントベースの拡充とクロスボーダー取引への取り組みが検討課題であるし,後者については条件決定等のレベルアップとともにリサーチ機能の充実がテーマである。
 再編後の大銀行グループとの競争が予想される近い将来においては,これらを複合的に展開しつつシナジー効果 を生み出すようなビジネスモデルが望まれる。

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