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第28号(2000年11月) 金融業の融合と金融サービス市場法

ドイツのベェンチャー・キャピタル市場の構造

飯野由美子(敬愛大学助教授・当研究所兼任研究員)

〔要 旨〕

 現在進行しているIT革命は生産性を大幅に上げ,国際競争力を決する重要な要因となっている。その中でドイツはIT化に遅れているという。その理由の1つとして,ヴェンチャーファイナンスが未発達なので技術力ある若い中小企業にリスクキャピタル供給がなされないという点が指摘されている。ところが,ごく最近になって,ヨーロッパで急速にインターネットが普及,企業間ネットワーク,e-commerce等が拡大している。これらを支えるインターネット関連企業は非常に多くヴェンチャー・ビジネスを含むから,ヨーロッパでのIT化の背後には,ヴェンチャー・ビジネスを資金面 で支持する何らかの仕組みがこの間生まれたと考えられる。
 本稿では,1)従来ドイツでヴェンチャー・キャピタルが未発達であった現実を数字から跡付け,2)その制約要因として,(1)投資形式と投資先企業への影響力,親銀行との関係,投資対象を具体的に見ることによって,銀行系ヴェンチャー・キャピタルが銀行系であるが故に投資行動の保守性が出てくることを導き,(2)ヴェンチャー・キャピタルの投資回収の選択肢(いわゆる“exit”)が非常に限定されていたことを明らかにする。3)そしてその制約要因が主としてヴェンチャー・ビジネス向け取引所セグメントである「ノイア・マルクト」の創設によって取り除かれ,ヴェンチャー・キャピタル市場に大きな転換期が訪れたことを述べる。

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