第30号(2001年3月) 金融システム改革下の公社債市場の課題
金融システム改革法施行後の公社債市場
小林和子(東京研究所主任研究員)
- 〔要 旨〕
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市場型新金融商品の法的承認,取引所市場集中主義の撤廃,売買委託手数料固定制の完全廃止等,金融システム改革法の大きな骨組みは,株式市場には非常に大きな影響を与えるものであったが,公社債市場には相対的に小さな影響しか与えないであろうと予測された。理由の大半は,公社債市場に関する規制の最大のものは直接的起債計画から自主規制適債基準,格付基準に至るまでの起債調整であり,それが改革法議論以前の1996年1月から完全に撤廃されていたからである。むろん,その撤廃で流通 市場まで含めた公社債市場取引の全体が完全に自由になったわけではないが,改革法ではそれは議論されず,いわば別 途方策を考えることとされたのである。
金融システム改革法施行の効果は実際上1999年以後現れた。その後の議論が実質21世紀入りを見据えたものになるのは当然である。2000年6月末に21世紀の金融の枠組みを論ずる2本の報告がある。金融審議会答申と大蔵省「21世紀の資金の流れ」研究会報告書である。これらの中で公社債市場に関しては,前者が証券取引決済システムの改善と統合化を明示し,後者はミドルリスク・ミドルリターンの公社債商品に積極的に触れないという形で一般 論の限界を示した。
改革法施行以後の新展開は,しかしながら,発行市場においても流通 市場においても,電子取引の分野で目覚ましく,市場に関する予測の不確実さを思い知らされた観がある。またこれまで流通 市場の活性化を考える際にどうにもしがたい障壁として捉えられていた社債等登録法の存在が,実質上の廃止という扱いになることは,21世紀の公社債市場にとって大きな発展の与件になると思われる。公社債市場は「市場外の障害」を取り外して,ようやく戦時体制から脱却しうるのである。