第32号(2001年7月) 変革期の資産運用業
金融商品販売法と投資信託の目論見書
高橋元(作新学院大学・大学院教授)
- 〔要 旨〕
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『金融商品販売法』の施行により,従来の業法を横断的に規定する枠組みが整った。これに伴い,金融商品販売業者には重要事項を顧客に説明する義務が生じ,係争の際の顧客負担が軽減されるところとなった。ただ,同法には必要最低限の内容が記述されているだけであり,業者の自主的な対応に委ねられている部分が多いことから,それがトラブル発生の芽を内包しているという懸念も残る。
一方,同法の下でも,投資信託の販売用資料としては目論見書に依存せざるを得ないが,目論見書は業者・顧客双方にとって問題の多い存在である。顧客にとっては読み難い記述内容(無機的且つ難解)であるし,業者にとっては事務負担が重く,そのコストは最終的には顧客に帰せられる。目論見書は,少なくとも『金融商品販売法』における重要事項の説明を行うのに最適な資料と評価することは出来ない。
従って,将来的には,より現実に則した制度を,改めて整えていくことが望ましいが,現下の枠組みの中では,要約目論見書の活用等と共に,業者と顧客間を結ぶコミュニケーション・ルートの確立が希求される。その際,特に投資教育に関して業者・顧客の双方が積極的に臨むことが重要であり,それが『金融商品販売法』の精神を有効に機能させることにも繋がろう。