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第33号(2001年9月)

金融システム不安下デフォルト・スワップの価格形成
―その実証分析―

近藤順茂(早稲田大学非常勤講師)

〔要 旨〕

 本稿の目的は,我が国金融システム不安を受けた1998年から1999年にかけてのデフォルト・スワップ・プレミアムの価格形成要因を実証分析するものである。デフォルト・スワップは,金融ビッグ・バンを契機に近時我が国市場に導入されたクレジット・デリバティブ商品の一形態である。同時期における商品提供者の多くは欧米系投資銀行であり,貸出資産の圧縮など資産コントロールを課題とする大手邦銀などが商品の買い手となった。本稿ではまずBIS基準の動向,資産コントロール手法としての証券化における具体的課題,またクレジット・デリバティブの機能や仕組みなどにつき概観する。
 価格形成要因としては,取引手段の属性的要因(格付,年限,業種特性)や現物資産である社債スプレッドとの裁定状況に加え,日経平均株価やジャパン・プレミアムといった市場環境要因について調べている。後者は同時期における「日本売り」のシナリオ要因であり,そうしたシナリオを材料として状況増幅的とも言える振れの激しい価格形成が見られる。値動きの幅は現物資産である社債スプレッドをはるかに超えるレベルである。それからすれば同取引手段のプレミアム支払いを通じ大手邦銀から欧米系投資銀行への相応規模の所得移転が行われたとも言えよう。
 こうした結果は,我が国における資産証券化にとり,市場として必須の機能が不足していたことによると考えられる。ここでは市場参加者への政策的インプリケ―ションとして,第一に我が国におけるデフォルト・スタディーのさらなる開発,第二にデットをも焦点に加えた内外インベスター・リレーションズ活動の必要性をあげている。

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