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第33号(2001年9月)

公的年金資産がわが国家計の資産保有行動に与えている影響

若園智明(中央大学大学院)

〔要 旨〕

 高齢化が進むわが国において,老後の生活資金を賄う公的年金が果たす役割の重要性は増すばかりである。しかしながら,現行制度下では世代間での所得再配分のバランスが崩れかけており,拡大する世代間の不公平性は家計の公的年金制度に対する信頼を低下させる一因ともなっている。このような状況下では,家計は公的年金の資産評価を強めていると考えられることから,家計の資産保有行動に対して公的年金資産が従来よりも強い影響を与えていると予想される。本稿ではこの点に着目し,公的年金資産の増加が家計の資産保有に与える影響について,個票データを使用した実証分析を行うことを研究目的とする。更に,世代間での負担保険料と給付額の関係に顕著な差がみられる点を踏まえ,賦課方式に特有の世代間移転部分についての代替性についても観察する。また,従来の推計モデルでは,観察される年金資産の代替性にゼロ方向へのバイアスが生じていることが指摘されており,この点に対処すべくGale[1998]で提示されている調整係数Q値を用いた推計を行っている。本稿の結果では,バイアスを除去した場合に,公的年金資産の家計保有資産に対する代替性は向上し,より完全代替に近い値が得られている。また,世代間移転部分に関しても代替性の存在が観察されている。世代間移転部分に関しては,公的年金制度への不信感がより強いと思われる若年世代ほど保有資産との代替性が強いとの結果が出ている。

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