第35号(2002年1月)
ヨーロッパ3大取引所の株式上場とヨーロッパ株式市場統合
吉川真裕(当所大阪研究所主任研究員)
- 〔要 旨〕
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2000年12月11日,ドイツ取引所の監査役会でロンドン証券取引所との合併計画のために中止した株式上場が再び決議され,2001年2月5日に世界の主要な取引所としてははじめて株式上場を行った。初値は公募価格から8.1%の値上がり,引け値では公募価格から11.3%の値上がりであり,旺盛な買い注文が集まった。他方,パリ取引所を中心としたユーロネクストもドイツ取引所の上場計画発表後に2001年第2四半期の上場計画を発表していたが,新規株式公開市場全体の低迷から上場時期を延期し,2001年5月24日にロンドン証券取引所の上場計画が発表された後,7月5日の上場を決定した。初値は公募価格から4.2%の値下がり,引け値では公募価格から8.5%の値下がりと人気を集めることはできなかった。そして,2001年7月20日にロンドン証券取引所も株式上場を果たしたが,新規売出しを行わず,店頭市場での取引もすでに行われており,引け値では8.2%の値下がりであった。
2001年9月28日にロンドン国際金融先物・オプション取引所(LIFFE)は複数から買収提案を受けていると発表し,その後,買収提案を持ちかけているのが上場を果たしたヨーロッパの3大取引所であることが明らかになった。そして,LIFFEの取締役会は10月29日にユーロネクストの買収提案を受け入れることを株主に提案した。ヨーロッパの株式市場統合という点では,イギリス,ドイツ,フランスの株式市場が何らかの形で統合されることがその核心であり,単一の取引システムに拘ることはかならずしも必要ない。国益やプライドといったものがヨーロッパの株式市場統合を妨げている最大の要因であり,1人勝ちする仕組みではなく,共存できる仕組みの速やかな導入こそが目指されるべきであろう。