第36号(2002年3月)
戦前期証券法制の対象と効力(上)
小林和子(当所理事・東京研究所主任研究員)
- 〔要 旨〕
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当研究所証券史資料編纂室で編纂する『日本証券史資料』戦前編第一巻「証券関係元老院・帝国議会審議録(一)」および第二巻「証券関係帝国議会審議録(二)」が刊行され,戦前期の証券関係法制とその審議録は基本的に揃えられた。資料集としては第一巻で取引所法関係をまとめ,第二巻でそれ以外の関係法制をまとめたが,これらを包括して,戦前期の証券法制を全体として関連付け,法律の対象と,法律の実際の効力を考えることが本小論の目的である。そのために,証券関係法制を時系列的に並べ確認したうえで,分野別分類を試みる。取引所法,業者法,株式法,社債法,投資信託法,外貨債法,税法の7分類に分け,それぞれの構成と特徴を明らかにし,分野間の関係を見る。論文は上・下に分けて,上(本論)では取引所法と業者法までを対象とする。日本の証券法は国債取引の管理のために株式取引所を創立するところから始まったため,取引所法の分類が第一の,そして最大の分類になる。取引所法には欠けている取引所以外の業者に関する業者法が,次いで大きな分類となる。この2大分類の内容を理解することは,戦前期の証券市場の骨組みを知ることにつながる。