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第36号(2002年3月)

負債は企業を規律付けるか、メインバンクはモニタリング機能を果たすか

松村勝弘(立命館大学教授)

〔要 旨〕

 エージェンシー理論に依拠して,企業行動は負債によって規律づけられている,すなわち「負債の規律」がある,あるいはメインバンクが企業をモニタリングしている,という主張がなされている。さらに最近は負債やメインバンクのこのような機能が低下したので,証券市場が企業を規律づけるべきだという主張がなされている。本稿は,果たして負債は企業を規律づけることができるのか,またメインバンクは企業をモニタリングできるのか,を問題にする。それを実証する先行研究を批判し,その批判を実証的に確かめた。実証が示すように,負債による規律づけやメインバンクによるモニタリングは容易ではないのである。確かに企業は,金利を支払わなければ倒産ということになるし,いつまでも配当金を支払わずに経営者の地位が安泰ということはあり得ない。だからといって,金利要求・配当要求さえしっかりしていれば企業が収益をあげられるほど経営というものは簡単なものではない。金融市場・資本市場が要求するからといって経営がうまく行くわけではないし,アンケート調査からも経営者は資本市場よりも製品市場の制約のほうが大きいと考えている。これから資本市場による規律に期待することもできないだろうことがわかる。他方で,企業がメインバンクに期待するものはラストリゾート機能である。事実メインバンクはその役割を果たしてきているし,今でも果たしている。従来このような下支えが企業経営者に安心をもたらし,積極的な経営を行うことができたのである。

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