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第38号(2002年7月) ユーロ導入後のEU経済と証券市場

ユーロ発足後の債券市場
―1999年〜2001年の展開―

岩見昭三(奈良産業大学教授)

〔要 旨〕

 1999年のユーロ発足後ユーロ建て債の発行が急増し,国際債では1999年にユーロ建て債のネット発行シェアがドル建て債のそれを上回り,2001年においてもドル建て債の発行と拮抗する活況を呈している。ユーロ圏各国の債券市場は,発行規模,債券種類のいずれにおいてもきわめて不均等であるが,そのなかで圧倒的地位を占めるのが,ドイツの金融債とくに抵当債(Pfandbrief)であり,これがユーロ発足後のユーロ圏債券市場の発展をリードしてきた。さらに,ドイツは,ユーロ圏外からの債券投資の最大の窓口となる一方で,ドイツによる債券投資の大半を他のユーロ圏諸国に集中させており,この意味で「金融回転台」としての機能を果たしている。
 しかし,逆に,他のユーロ圏諸国からドイツへの債券投資は2001年でも大幅な売り越しが続いており,ユーロ圏内各国債券市場間の資本取引は一方的であり,相互投資の発展には至っていない。その他,ユーロ圏各国政府債利回りスプレッドの残存,単一ベンチマークカーブの不在も各国債券市場間の分断状況を示している。
 この分断の残存の原因として,資本取引税制,証券決済システム,発行制度,会計制度の不統一,債券格付け機関の未発展が挙げられるが,これらの根底には各国の国益の対立がある。したがって,ユーロ圏債券市場の今後の発展の成否は,各国の国益の対立を如何に克服できるかにかかっている。

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