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第38号(2002年7月) ユーロ導入後のEU経済と証券市場

EU証券規制の新展開:その背景と現状

岩田健治(九州大学大学院助教授)

〔要 旨〕

 EUでは,1992年の市場統合の際に,域内の証券会社に対する単一免許制度を定めた「投資サービス指令(ISD)」が施行され,また市場法関連においても上場関連の一連の指令やインサイダー取引規制等のEU法が整備され,資金調達者・証券業者・投資家にとっての域内市場が構築された。
 しかしながら,99年以降「金融サービス域内市場のための行動計画(FSAP)」や「欧州証券市場の規制に関する賢人委員会報告(ラムファルシー委員会報告)」などが矢継ぎ早に出され,市場統合時に整備された一連の証券法の全面的な手直しが進んでいる。こうした手直しの背景としては,(1)92年市場統合の際に残された残存障壁の除去,(2)92年市場統合によるEU証券法整備の結果,域内の市場の側で生じた種々の変化(金融機関や取引所のコンソリデーション等)への新たな次元での対応,(3)グローバル化やICT(情報通信技術)革命といった外的環境変化への適応,などの要因が考えられる。
 ラムファルシー報告では,証券立法・政策実施プロセス自体にメスが入れられ,欧州証券委員会(ESC),欧州証券監督者委員会(CESR)などの諮問・規制機関が創設されている。これによりEU証券立法・政策実施プロセスの迅速化・透明化が実現した。
 この新プロセスのもとで,ISDや市場法関連の諸指令の見直しが急ピッチで進んでおり,2003年末にも新しいEU証券法体制が完成する。それにより,グローバル化やICT(情報通信技術)化に迅速・柔軟に対応可能な新しい立法・政策実施プロセスを備え,ユーロ導入のメリットを十分に引き出すことができる,完成度の高い「EU域内証券市場」が出現することになる。

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